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【10】自分の価値観、感性を行動に移す(1)

自分を大切にする、自分を満たすための第一歩は、自分の価値観、感性に耳を傾けて、それを受け入れることです。

今回は、そこからさらに一歩進んだ次のステップ、「自分の価値観、感性を行動に移す」ことについて説明します。

価値観、感性を行動に従って行動する…と言葉にするのは簡単ですが、実際にはそう簡単でないことは多くの人が経験していると思います。

その理由の一つとして、価値観や感性が訴えてくることは往々にして突拍子がなく、世間の常識や、これまでのあなたの経験値と照らし合わせると、「そんなことを行動に移すなんてありえない」ということが多いことが挙げられます。

こういう場合、どのように捉えて、行動していけばいいでしょうか。

動作学的に考察してみましょう。

本当にありえないことなのか

たとえば、Aさんと約束しているZoomミーティングが5分後に始まるとします。

あなたは家にいて、ミーティングに必要な資料などを準備していていましたが、ふと「コーヒーが飲みたい」と感じました。しかも、「家から往復で15分かかるところにあるコーヒショップのおいしいコーヒーを飲みたい」と。

ああ、なぜ今、こんな時に!

けれど、そういった「ふと」こそ、あなたの感性が訴えてきたことで、動作学的にはぜひ行動に移していただきたいことです。

でも、コーヒーを買いに行けば、ミーティングには少なく見積もっても10分は遅れそうです。

あなたは、「忙しいAさんがようやく時間を作ってくれたミーティングなのに、自分がコーヒーを飲みたいというだけで遅らせるのは失礼だ」と思うかもしれません。

「そんなことをするのはありえない」と、コーヒーを買いに行きたい欲求を抑えようとするかもしれません。

ここでまず考えていただきたいのが、それは本当にありえないのか、です。

10分遅れるのは失礼、というのはあなたの考えであって、もしかしたらAさんの時間感覚では10分程度は遅れとも感じないという可能性はないでしょうか?

Aさんが忙しいというのも、ミーティングの日時を設定する時にそう聞いただけで、もしかしたらその後、Aさんのスケジュールが変わって余裕ができている可能性はないでしょうか?

もちろんそうでない可能性もあるのですが、いずれにしてもあなたがありえないと思うことはあなたがそう思い込んでいるだけであることがほとんどです。

「社会人としてありえない」「大人としてありえない」「日本人としてありえない」といった多くの「ありえない」も、100人いたら100人が全く同じ基準で捉えていることはまずありません。

それでもやっぱり、ありえないでしょうか?

実現することがゴールではない

ありえないというのが思い込みだと気づいたら、コーヒーを買いに行ってミーティングに遅刻してもいいのか? それは自分勝手ではないか? というのが、おそらく次に立ち上がる疑問でしょう。

けれど、自分のしたいことを行動に移すことは、相手や関わる人を尊重しなくていいということではありません。

先に挙げた例で考察してみます。

もしAさんに何も告げずにコーヒーを買いに行って10分遅れたら、あなたはあなたの感性に従って行動したとは言えますが、Aさんを尊重したとは言えません。

だから、それを勧めたいわけではありません。

かといって、何も言わずにコーヒーを諦めたら、あなたはあなたのしたいことを行動に移さなかったことになります。

この場合、あなたはAさんを尊重できたかもしれませんが、自分のことは尊重できていません。

自分を尊重しない言動は、あなたの生命(いのち)のシステムの目的に反することですから、一つ一つは小さなことでも、積み重なるとやがてどこかに歪みが生じます。

では、どうしたら両者を尊重しながら行動に移せるでしょう?

シンプルに実践しやすいのは、「10分程度開始時刻を遅らせることは可能か」とAさんに聞いてみることです。

聞いてみたら、Aさんはその前のミーティングが長引いていて、10分遅れるくらいがちょうどありがたいという状況にあるかもしれません。

その場合、あなたは心置きなくコーヒーを買いに行け、自分を満たしたといういい気分でミーティングに臨めるはずです。その結果として、ミーティングの内容もよりよくなるかもしれません。

もちろん、そんなうまい話ばかりではなく、「スタートを遅らせるのは構わないけど、次のミーティングがあるから終了時間は変えられない」とAさんに言われる可能性もあります。

「だったら10分も時間が削られるのは惜しいから、ミーティングを優先しよう」とあなたは感じて、コーヒーなしでミーティングに臨むことになるかもしれません。

その場合、コーヒーは飲めないわけですが、コーヒーを買いに行きたいと思った最初の思いつきを達成するために「ミーティングの時間を遅らせる相談をする」という行動をあなたは取りました。

「ミーティングを優先しよう」という感覚は、最初に取った「相談する」という行動の結果を経て出てきた新しい感覚で、あなたはその新しい感覚にも従ったわけです。

これだとあなたはその時、その時、自分が感じていることを行動に移していると言え、自分をちゃんと尊重できていることになります。

そう、コーヒーを飲まないことにしたという表面的な結果は同じでも、何も行動せずに諦めた場合と、行動した結果としてそうした場合では、あなたの生命(いのち)システムの中では全く違う出来事として処理されていくのです。

言い換えると、自分の価値観、感性を行動に移すということは、それらの価値観や感性の実現・達成に向けて何かしらできる行動をすればいいということでもあり、実現・達成することにこだわらなくていいんですね。

思いついたことを実現するために今できる一歩を行動に移す

その行動の結果をインプットした後の心のささやきに耳を澄ませる

新たな心のささやきを実現するために今できる一歩を行動に移す

その繰り返し。

そう捉えると、自分のしたいことを行動に移すことへのハードルはぐっと下がるのではないでしょうか。