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【40】動作学的 幸福論(1)

ここ数回にわたって、動作学的な組織作り「自己進化型組織」について解説してきました。

トピックがトピックでしたので、企業などの組織作りに実際に携わっている方に向けた内容が多くなりましたが、人はそもそも社会的な生き物ですから、誰でも必ずや何らかの形で組織と関わってもいます。

たとえば会社員なら、所属している会社は、関わっている組織の一つと言えます。フリーランスで働いている人でも、一人だけで仕事が完結することはまずないはずで、複数の人とたちとチームのように関わり合いながら仕事を進めているでしょう。

ちょっと強引かもしれませんが、家族というのもまた、一つのチームのようなもの。そして、大きく捉えるなら、日本の社会だって一つの巨大な組織と見ることもできます。

ところで、「自己進化型組織」を作るにあたっては、組織・チームを改革する責任は、組織作りに関わる上位レイヤーにある、とこのマガジンでお伝えしました。では、上位レイヤーにはおらず、組織作りに直接関わることはない一個人が、もし、その組織の中にいることに幸せを感じていないとしたら、どうすればいいでしょうか? 責任者たちが居心地の良い組織を作り上げるまで待つしかないのでしょうか?

答えは、イエスであり、ノーでもあります。

イエスであるのは、その組織をどういう組織にするか、方向性を定めて実践していくのは、実際問題、上位レイヤーの人たちにしかできないことだから。

一方で、ノーとも言えるのは、たとえ組織やチームがどういう状況であったとしても、あなたという個人を幸せにするのは他の誰でもないあなたに責任があるからです。

幸せな人とそうでない人の差はどこからくる?

たとえば、同じ会社の同じ部署にいる同期のAさんとBさんがいたとします。

Aさんは会社の雰囲気を心地良く感じていて、自身の意見を述べることにも抵抗がなく、生き生き楽しく働いています。

一方、Bさんは会社の環境に不満を抱いていて、自分の意見を気軽に言える雰囲気ではないと感じているけれど、お金のためにはここで働くしかないと思っています。

でも、AさんとBさん、働く環境は同じなのです。にもかかわらず、仕事に対する幸福度がこんなにも違うのは、なぜなのでしょうか?

もちろん、人生には仕事以外の側面もたくさんありますから、あまり極端に単純化はしたくないのですが、それでも、同じ日本で、同じ世代に生まれ、同じ時期に同じ会社に入って同じ部署で働いているのに、仕事をしている時の充実度、幸福度が全然違うという事態がなぜ起こるのかは、一考の価値があります。

というわけで、ここで、動作学のレンズを使ってみましょう。

下図は、物事を動作学的に見る時の基本の一つです。

この図が示しているのは、以下の2つのことです。

  1. 仕事に対するやる気や気力、幸せだと感じる状態は、あなたから出てくる事象、つまりアウトプットである

  2. あなたのアウトプットは、あなたという個人と、あなたを取り囲む環境の掛け合わせによって発生する

組織やチームというのは、いわばこの環境の部分にあたります。

これで見えてくるのは、組織やチームの状態は、あなたのアウトプットに影響はするけれど、それだけが100パーセントの要因ではなく、あなたの個人の状態も関係してくるということです。

つまり、仕事における環境は同じなのに、AさんとBさんでアウトプットが違ったのは、AさんとBさんという個人の状態が異なるからなんですね。

で、ここからがとても大事なのですが、もしあなたの現状がBさんで、でもAさんのように充実感や楽しさを感じながら仕事をしたいのであれば、あなたにできる選択は3つしかありません。

  1. あなた自身を変える

  2. 自分のいる環境を変える

  3. あなたと環境、両方を変える

ただ、どの選択をするにしても、いずれかの選択肢を選ぶことと、その選択を行動に移すのは、あなたです。

このマガジンで何度もお伝えしている「自分に矢印を向ける」というのはそのこと。つまり、自分の人生に幸福感や充実感をもたらすか否かは自分の選択である(自分しか選択できない)と知ること、そして自ら選択したことを実行すること、それが「自分に矢印を向ける」ということなんですね。

幸せを選択する権利は、常にあなたにある

たとえば、自分のいる環境を変えるという選択をする場合、自分に合っていない会社を辞めて転職するという選択や、うまく機能していない家庭から離れてみるという選択が考えられます。

「いやいや、転職はリスキーだからしたくない」「家族から離れて一人暮らしするのは経済的に無理」など、さまざまな理由で環境を変えないという選択をするのももちろんありです。ただ、その場合も、環境を変えないという選択をあなたがした、ということはぜひ自覚してください。

そして、幸せを感じたいけれど環境を変えないという選択をしたならば、他にあなたにできるのはあなたを変えることだけ、です。

ただ、ここで勘違いしてほしくないのは、あなたが悪いからあなたを変えなくちゃいけないということではない、ということ。

あなたが幸せを感じられないのは、これまで生きてきた中で、知らないうちにいろんなフィルター(常識、思い込み、事実に即さない信念など)を身につけてしまったというだけ。そもそも、生命の仕組みに逆らわない生き方ができればもっと自然に幸せを感じられるはずなのに、いつのまにか身につけたフィルターのせいで、生命の仕組みに逆らわないということがどういうことか、わからなくなってしまって、できないでいるだけなのです。

だから、あなたを変えるというのは、本来持っている幸せを感じる力を取り戻すこと、でもあるんですね。

では、どうやったらその力を取り戻せるのか? このマガジンでお伝えしていることは全てがそこに通じると言っても過言でないのですが、何よりも大事な第一歩は、自分には本来幸せを感じる力が備わっていると思い出すこと、そして、それを取り戻すのだと決意すること、でしょう。

自らに力があることを思い出し、その力を自ら取り戻すと決心した時、あなたはちょっとスッとするような、ホッとするような、いい気分を感じるはずです。その感じこそが、生命(いのち)の営みに沿っている、すなわち幸せな選択をしている時の感覚です。

何か嫌なことがあった時も、ひとしきり怒ったり泣いたりして落ち着いた頃でいいですから、ぜひ心の中で唱えてみてほしいのです。「私にはこの状況の中でも幸せを感じる力があるはずなのだ。私はこの状況の中でも幸せになる方を選択することができるのだ」と。

心から本当にそう思えたら、その時、あなたはまたちょっといい気分を感じるはずです。そしたら、ぜひ自分を褒めてあげてほしいのです。なぜなら、それこそが、あなたがあなたの選択で幸せを選んだ瞬間だから。

幸せな人生って言葉にすると壮大ですけど、実際には、そんな小さな選択の積み重ねでしかありません。でも、その小さな選択の積み重ねが、やがて壮大な違いになっていくのです。