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【46】「今やりたいことをする」と「ラクをする」の違い

さて、前回は、今やりたいことをやることが未来の目標達成とどう関係しているか、動作学的な観点からお話しました。

要点だけかいつまむと、今やりたいことをやって、いい気分であり続けることが未来にとっても大事、ということなのですが、このときによく混同するのが、「やりたいことをやる」と「ラクをする」の違いです。

やりたいことをやるって、実際にはラクなことはなく、ましてや怠けることではありません。むしろ頑張らなければいけないことの方が多いくらいなんです。

動作学のレンズを通して、このあたりを整理してみたいと思います。

「やりたくない」 と 「やりたい」は違う

今やりたいことをやるというのは、今やりたいことを感じ取って、感じ取ったことを実行に移す、ということです。

ここで注目していただきたいのは、あくまでも「やりたい」を実行に移すという話をしていること。

よく混乱が起こるのは、「夢を叶えるために勉強をした方がいいのはわかっているけれど、今はやる気分じゃない」「プレゼンに備えて資料を早く作った方がいいとわかっているけど、今はやる気が出ない」というような「やりたくない」気分のとき。

それは、「やりたくない」であって、「やりたい」ではないんですね。

何が言いたいかと言うと、「やりたくない」ことをやらないことは、「やりたい」ことをやることとは、違うということ。

もちろん、インプット・プロセス・アウトプット(知覚行為循環)の仕組みで見れば、「今はやりたくない」という気分が出てきているなら、それが今現時点でのあなたの最適解であることは確かです。

ただ、「やりたくない」という気持ちを受け入れただけで、何もやらなければ、変化は起こせません。

というのも、何もしなければあなたのインプット情報が大きく変わることはないから。

インプットが変わらなければ、それらをプロセスした結果として出てくるアウトプットも大きく変わることはありません。

つまり、いつまでたっても「やりたくない」という気分が出続けるだけなんです。

厳密には、あなたが変わらなくても周辺の環境が変わることはあるので、それに応じてあなたの気分も変わる可能性はあります。でも、それだと変化を起こす主導権は自分にはなく、他人任せにしているだけ。

夢を叶えること、目標を達成することは、たまたま今はやりたい気分でなかったとしても、大局で見ればあなたがやりたいことでもあるはずなんですよね。

だとしたら、やはり自ら主体的に変化を起こす努力は必要なんです。

ただ、努力するのは、あくまでいい気分でい続けることに対して。

つまり、やりたくないことをやりたくない気分のまま頑張ってやるという努力ではないんです。

ここらへんがちょっとややこしいので、さらに具体的に見ていきましょう。

「◯◯したい」が出てくるために努力する

まず、答えを先に言うと、やる気が出ない、今はしたくない気分だ、というとき、努力する必要があるのは、何でもいいから何かやりたい気分が出てくるようにすること、です。

具体的には、今ここでできるインプットを見直すことで、出てくるアウトプットを変える努力をするんですね。

たとえば、やる気が出ないけれどやらなければいけない物事について、他の視点から見てみることでインプットの数を増やす。

あるいは、その物事についてポジティブに捉えるようにしてみることでインプットの質を変える。

そうすると、インプット情報が変わるので、その結果として出てくるあなたの気分も変わってきます。

プレゼンの資料作り、全然気が進まなかったけれど、上司は何を求めているか、上司の視点を意識したら、まとめ方のイメージが見えてきて、さっきよりやる気が出てきた、とか。

勉強をしなければいけないのにやる気が出ず、自己嫌悪で落ち込んでいたけれど、たまには休むことも大事だと前向きに捉えてみたら、ホッとしてちょっと元気になってきた、とか。

そうやってインプットの質と量を変えた結果、やりたくなかったことに対してやる気が出てきたら、あとは取り掛かればいいだけ、です。

一方で、とりあえず外に出て気分転換したい、とか、誰かに連絡して相談したい、とか、他にやりたいことが出てくることもあります。

その場合も、何であれ、インプットの質と量を変えた結果出てきた「◯◯したい」をできる範囲で行動に移してみるといいんですね。

もし、インプットの数や質を変えるということがどういうことかよくわからない場合は、「今、何をすれば自分の気分はちょっとよくなるかな?」と考えてみて、思い浮かんだことをやるのも一案です。

気分がよくなるというのは、大袈裟なことではなく、ちょっとホッとできる、ちょっと落ち着ける、と言い換えて構いません。

いずれにしても、「やりたくない」という気分のままで居続けないこと、どんなことでもいいから「やりたい」が自然に出てくるようすること、そうやって出てきた「やりたい」を実行すること、の三つがポイント。

三つ目の実行までを含めることがとても大事で、行動することがまた新たなインプット情報となって、さらにアウトプットを変えていく…というふうに、動くことでより変化が促されるのです。

このように見ていくと、「今やりたいことをやる」は、「今やりたくないことはやらなくていい」とは似て非なる、ということがクリアになるのではないでしょうか。

むしろ、「今やりたいことをやる」ためには、やりたいことが出てくるような自分の状態を作り出す必要があるし、やりたいことを行動に移す勇気も必要で、まったくラクなことではなく、強い意志が求められるとも言えます。

強い意志と言っても、やりたくないことを意志の力で制するというような意志の強さではなく、自分をいい気分にすることに責任を持ち、いい気分になる選択をし続けるという意志の強さ。

具体的には、今、何がしたいか? 何もしたくないなら何をしたらいい気分になるのか? というふうにどんな気分のときでも常に自分に矢印を向けて考えられる強さであり、自分の生命のシステムが出してきた「◯◯したい」を行動に起こす強さ、なのです。