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一流の指導法〜ティーチングの愚〜

昨日、侍JAPANヘッドコーチ白井一幸氏のコーチングについて書きました。
今日はなぜティーチングがいけないのかを見ていきます。
昨日の記事はこちら

ティーチングの3悪

前回、全員が最低ラインの実力を持っているプロ野球選手においては必要なのはティーチングではなくコーチングであるとお伝えしました。

では、なぜティーチングがいけないのか。理由と原因を挙げます。

①怒る
ティーチングの3悪の1つ目は「怒る」です。

白井氏や白井コーチが師事したヒルマン監督は選手がミスをしても怒らないそうです。
何度も繰り返しますが一番悔しいのは監督・コーチではなくミスをした選手です。その状態で選手を怒れば選手は萎縮し、動けなくなります。

そして1番問題なのは人間関係が壊れることです。
あの松下幸之助さんが部下を叱ったあと、部下の家に電話し、奥さんに事情を伝えて「きっと落ち込んでいるから明るく出迎えてやってください」と伝えていたそうです。

そうです。怒った方もアフターフォローという仕事が増えるのです。
また怒っている最中は肉体的なストレスが貯まり、あとで冷静になると精神的ストレスが貯まります。
そしてコーチのストレスで選手が怒られていたとしたら、選手はやる気を失います。

コーチの仕事とは選手にやる気を出させることでしたよね。
全く真逆のことをやっていることになります。

4つの全力
但し、いくら怒らないと言っても、白井氏は全く怒っていけないわけではないと言います。
白井氏の怒る怒らないの境界線は「全力」かどうかです。それはプレーが全力かどうかだけではありません。
日常も含め4つの全力が求められます。白井氏は「私が(プレーに対して怒らないけど)1番怖い」と言います。その4つの全力は以下になります。

①準備
 試合に臨むにあたり万全の状態で望めているか。ウオーミングアップや体調管理がここに当たります。
②頭
 一言でいうなら「状況判断」です。今の状態でこういう打球が来たらこうする、と言ったイメージが常日頃の練習からできているかが大事と言います。なぜなら試合中にそんなことを考えている時間はないからです。
③心
 「三振したらどうしよう」「エラーしたらどうしよう」と思ってプレーしている選手は論外だと白井氏は言います。当然「打ってやる!」「俺のところに飛んでこい」と思っている選手が活躍することは明白でしょう。

◎萎縮や緊張はいいこと
白井氏は萎縮や緊張はいいことと言います。それは成長したいと思っているからこそ萎縮・緊張が発生するからです。ここでのコーチの役割は萎縮を取り除くアプローチをして、萎縮の裏にある成長意欲を表に出すことです。

また1点リードの9回裏の守り、2死2・3塁。アウトを取れば優勝、エラーをすれば2位。そんなシチュエーションで自分のところにゴロ飛んできたに如何にミスなくできるかまでを意識して、日頃のキャッチボールをすることが求められます。

④身体
 ここはプレー面です。全力疾走などです。

練習やオフの時間も選手の頭が常にフル回転を必要としそうです。

②教える
ティーチングの3悪の2つ目は「教える」です。
技術的な指導をする場合はどうしてもティーチングの部分が入ってきます。そこで大事なのは「感覚の共有」です。指導者の感覚と選手の感覚とは得てして違うものです。
また人はそれぞれ身体付き等も違うため、指導者が大事と思ったことでも選手にとっては必要ないことかもしれません。
ある程度わかっている選手にずっとティーチングしていると指示に従うだけの依存型の人間を作ることになります。

先日、阪神の臨時コーチである鳥谷敬氏が佐藤選手にサード守備の指導をしたそうです。その際、鳥谷氏は佐藤選手の脚が動いていないように見えたため、もっと前に取り行く意識をした方がいいと伝えたそうです。それに対して佐藤選手は「脚は動いている」「前に取りに行くと前重心になってしまう」という自身の感覚を伝えました。
翌日、鳥谷氏は別の練習メニューを用意し、そのメニューは佐藤選手の感覚に一致しハマったそうです。
コーチと選手の言語化が必須な時代になっています。

繰り返しますがコーチの仕事は「目的と目標を明確にして、やる気を出させて選手自身が考えて答えを出していくようにすること、そしてそれにより自信を持たせる」ことです。

③やらせる練習
ティーチングの3悪の3つ目は「やらせる練習」です。
前回もやらされる練習は意味がない。選手がやる気を失くすだけだとお伝えしました。
まずは選手自身が目的を持って考えて練習をする。そこでコーチはアドバイスを入れる。但し、アドバイスもタイミングが大事だと言います。
選手が聞く耳になっていないときはコーチの言葉は選手には届かないようです。

ここは儒教にも似てますね。
学びて時にこれを習う。また悦ばしからずや。
この学びて時というのが選手が聞く耳になっているという状態だと思います。

●欠点と長所
白井氏は欠点を責めるのではなく、「生かす」指導が大事と言います
スーパースター新庄氏が日本に帰ってきたときのこと。
白井氏は食事に誘われ、「右手が強過ぎて、バッティングがダメなのです」という相談を受けたそうです。その時白井氏は即座に新庄氏の思い込みを否定したそうです。白井氏は新庄氏の右手にすばらしいものがある選手と思っていたそうです。そして新庄氏に対し、その強い右手を生かしたアッパースイングを薦めたそうです。翌日から新庄氏のアッパースイングの練習が始まり、帰国後の好成績に繋がりました。

このエピソードは新庄氏が「聞く耳を持ったタイミング」だった、短所と長所は考え方次第というエピソードです。しかし、1番凄いのは白井氏が新庄氏(選手)のことをよく見ていること、把握していること、聞く耳を持つのを待っていることだと思います。

今回はティーチングの愚のついてでした。
明日は中間管理職のお仕事に関して引き続き、白井氏の本を参考にします。


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