千人伝(百八十一人目~百八十五人目)
百八十一人目 半熟
はんじゅく、の身体は半分がまだ出来上がっていない状態で生まれた。それは右半分だったり下半分だったりと、定型を持たなかった。熟していない部分は輪郭が曖昧になり、どろどろに溶けた鍋の中身のようになり、触れると高い熱を持っていた。
バイトの面接には落ちた。就職にも失敗した。顔が不定形になると、同じ顔には戻れなかった。誰かと手を繋いでいる最中にその手がぐずぐずに崩れだすと、相手は悲鳴を上げて逃げていった。歩いている最中に下半身が上半身を支えられなくなると長くそ