千人伝(百四十六人目〜百五十人目)
百四十六人目 千羽
せんば、と読む。千羽鶴を追っていた。千羽鶴を追い続けていた。千羽鶴が飛べば千羽もの折り紙に空は彩られて、夕焼けも朝焼けも埋め尽くした。そのような千羽鶴を見てしまえば、追いかけずにはいられなくなったというわけだ。千羽はあらゆる場所に縛り付けられた千羽鶴を解放した。病院や記念碑や体育館にある千羽鶴を解放するたびに、悲鳴より歓声の方が大きくあがった。
やがて千羽は自らも鶴を折るようになった。折り紙では飽き足らず、紙はどんどん大きくなっていった。家ほどの紙や、