千人伝(百四十一人目~百四十五人目)
百四十一人目 落音
らくおん、と読む。居間でくつろいでいる時に、洗面所の方で何かが落ちる音がした、ということがある。風呂上がりの同居人にこう聞いてみる「何か落としてた音してたけど」。意識しない駄洒落が発生した瞬間に生まれたのが落音である。
落音は偶然の出生によりなかなか仲間を得られなかった。似たような境遇の誰かと出会ってそのまま暮らし続けたかった。さまよい続けているうちに、落音は様々な音色に出会った。ため息のメロディや、いびきの歌声や、山鳴りのオーケストラなどに。落音は彼