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まちづくり人材育成プログラム・JaLoGoMa(ジャロゴマ)で気づいたこと④

2024年の夏、ポートランド州立大学で行われた、日本人向けまちづくり人材育成プログラムJaLoGoMa(ジャロゴマ)で思ったこと、気がついたことを。

オレゴン州の郵便投票の歴史

JaLoGoMa(ジャロゴマ)3日目のメインは、なんといっても郵便投票についての学びだ。

ちなみに、JaLoGoMa(ジャロゴマ)参加者のトシくんこと木曽さんのまとめはこちらから。



オレゴン州は全米で最も早く郵便投票を実現している。1981年に試験運用として地方議会の選挙への郵便投票が行われ、1987年には地方選挙にて本採用。以来、徐々に全州へと拡大し、現在は全ての投票が郵便で行われている。(オレゴン州の郵便投票の歴史はこちらから

もうすぐ街中に設置されるであろう、投票箱。これは大きいもの。
こちらは小さなサイズの投票箱。こちらのサイズの方が、私にはお馴染み。

郵便投票実現の立役者となったフィル・キースリング氏のレクチャーは、本人の思考や考えの変化などもシェアしてくれて、とても興味深かった。なんて人間味があって、親しみやすいのだろう。幾つになっても、どんなに成功しても偉ぶらず、Down to Earthな人でありたいと私は思う。

キーリング氏は1991年〜1999年の2期・8年間、オレゴン州の総務長官だった。政治記者を経て、州議会の下院議員へ、そして総務長官になったそう。氏は最初に言った。「すべての人が郵便投票が好きか?答えはNOだ。」

「投票する」という行為はただそれだけではない。投票は、人に会う機会であり、出かける理由であり、子どもと一緒に出かけることで民主主義や投票を体験させる学習機会でもある。投票という民主主義における根幹の儀式ともいえる。個人的にも投票日には家族で投票所に行って「一票を投じる」という行為(儀式)が好きだ。

だから、キーリング氏も最初は郵便投票の採用に反対だった。郵便投票は共和党の案だったし、キーリング氏は民主党の政治家だった。しかし、「その時の自分は『民主主義の真髄は参加にある』ということをわかっていなかった」と言った。

レクチャーの後、参加者の質問に答えるフィル・キースリング氏

オレゴンでは試験的な郵便投票の運用が行われたことにより、投票率が上がっていった。その効果を実感したキーリング氏は、州全域での郵便投票の実現に尽力していく。もちろん、新しいことをしようとすればさまざまな懸念も生まれる。不正など、選挙違反もあった。しかし、それらは投票率の向上などに比べれば、解決しうる小さな問題だったという。こうして、1981年に地方選挙から試験運用された郵便投票は、予備選挙、一般選挙、連邦公職選挙と徐々に拡大し、1996年には大統領選挙も郵便投票で行われるようになった。4年前のコロナ禍での大統領選挙の際、オレゴンは全米で最も高い投票率を記録したそうだ。(郵便投票の歴史と投票率の変化はこちらから)

現在、100%郵便投票になっているオレゴンだけれど、選挙センターには今も、実際に来て投票するためのスペースがある。実際に足を運んで投票したいという人たちのためのブースのほか、目の不自由な人などの投票をサポートするためのブースもあった。

この機械で選挙登録されているサインと届いた投票用紙の入った封筒のサインが同じが照合される。機械に弾かれたものは、人間の目で確認するそう。サインがないものは送り主に連絡をして対応。郵送は、現在は消印が期日内であれば受け付ける。
実際の集計はこの部屋で行われる。最も頑丈で安全で、担当の4名しか入れない。アメリカの選挙はマークシート式なので、機械で読み込む。機械に弾かれたものは、両党からの1名ずつの担当者、2名で見て判断するそう。

アウトリーチ/Outreach

JaLoGoMa(ジャロゴマ)の期間中、この言葉を何度も聞いた気がする。アメリカでは、特にポートランドではよく聞く言葉だ。

この日、投票所の案内をしてくれた、選挙委員会のスコッティー・ジェリントン氏は有権者教育や選挙公報の専門家として23年以上、選挙委員会に勤めている。市民へのアウトリーチも彼の担当だ。

そういえば、昔、ポートランドで大人気のスーパー”New Seasons Market”の取材でインタビューさせてもらったジャスティンの肩書きも、「ネイバーフッド・アウトリーチ・コーディネイター(地域渉外担当)」だった。(その時の記事はこちら

この「アウトリーチ」という言葉をカタカナで調べたら、グーグル先生は「さまざまな形で、必要な人に必要なサービスと情報を 届けること。 対象者の把握だけに留まらない。」というけれど、そのほかの情報は軒並み福祉関連の言葉として出てくる。そして、そこには「必要だと気づいていないような潜在的ニーズとつながる手法」とも。

本気で投票率を上げるのなら、テスト対策や進路指導や部活に忙しい学校の社会の先生を頼るのではなく、選挙管理委員会が”コミュニティ・アウトリーチ”活動するべきなのではないだろうか?主権者教育って、どこ担当?w 教育委員会と選挙管理委員会で、担当作ってやってほしいなぁ…なんて。

(性教育と主権者教育は、とても大切なのに教育指導要領から抜け落ちてる2大落とし穴かもね〜w )

JaLoGoMa(ジャロゴマ)中、何度も「仲間を作ること」が話されてきたけれど、何かをやろうと思うとき、仲間を探すとき、このアウトリーチが重要なのではないだろうか?

ポートランドは地域の多様な声を反映することを目指し、今年の11月の選挙より、市議の人数が5名から12名に増やす。その時の投票は候補者から一人を選ぶのではなく、順位をつけるという方法がとられる。その新しい投票方法を説明するためのチラシ。

なお、ポートランドではこれまで全体で5名の市議会議員を選出していたが、より公平で多様な声を市政に反映するため、ポートランドを4つのエリアにわけ、それぞれの地域から3名ずつの市議を選出するという新しい行政形態に移行する。

選挙委員会のスコッティー・シェリントン氏は、これらの告知のために、11月まで大忙しだそうだ。

投票から開票までの流れや、選挙委員会での自身の役割などについて説明してくれたスコッティー・シェリトン氏と、話を聞くJalogoma(ジャロゴマ)の参加メンバー


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