「ペチュニアの咲く丘に」#0 プロローグ
誰かが悪いとかではなくて、純粋な心は時として、人の欲望につけ込ませる魔の力を秘めている。
梅の花が咲き始める頃、咲良はこの家に越してきた。
東京生まれで同じ都内に引っ越した。引っ越す必然性はあまりないが、なんとなく自分の人生を環境からガラリと変えたかったのだ。
お正月に親戚が集まり、挨拶もつかぬ間に、叔母は私の年齢を聞いてきた。
26歳………
余計なお世話だ、全く。咲良の家系は結婚が遅く、自分の子にはもっと早く家庭を持って欲しいとの気持ちが比較的強い。
気持ちは重々有り難いのだが、結婚が先走り、私の今ある環境や心情は一切御構いなしかい。
気がつけばいつものごとく母とは口論になり、その瞬間決めた。
自分探しの旅をしようと。