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名作の条件

また、偉そうな題名をつけてしまいました。私の悪い癖です。

名作に条件など、本当はないのです。どんな作品でも、誰かにとっては名作なのです。でもそんな一般論を述べているだけではオリジナリティがないので、今日は私の思う名作の条件について述べさせていただきます。ちなみに今回述べる名作とは主に本のことです。

私の思う名作の条件は「何度読んでも面白い」、これに尽きます。何とありきたりなことだろう、と思われるかもしれません。しかし、こんな本に巡り合うのは中々難しいことだと思います。世の中に本は数あれど、大体は一回読めば満足してしまうものです。ストーリーは一回読めば大体わかっているし、登場人物の関係も分かり切っています。それでもなお、もう一度読みたい、と思わせるのは並みなことではありません。

名作に出会うと、私は陶酔に似た気持ちを味わいます。ページをめくると、そこにはもう何度も読んだ文章が。それがまるで実家のような安心感が去来します。冒頭の言葉など、もう諳んじることができるほど読み込んだというのに、それでも何だかワクワクします。ストーリーも、登場人物も、叙述トリックも全て知っているはずなのに、どうしてこうも心が躍るのでしょうか。

本を何度も読んでいると、変なページに折り目がついたり、表紙が破れたり、帯が剥がれたりします。しかしそれもまた楽しいのです。野球のグローブは最初は手が痛むほど固いのに、使うたびに段々と手になじんでくるといいます。これは本も同じです。不思議なことに、本もまた手になじむようになってくるのです。

そして何度も何度も読んでいると、その作品についての理解が深まります。1回目の時には気付けなかった部分が、2回3回目に気付くことが出来たりもします。「ははあ、冒頭から伏線が張られていたのだな」「この言葉の裏にはこんな意味が隠されていたのだな」と言ったふうな感じです。

「おいおい、一回読んだだけでわかった気になるなよ。俺はそんな浅い男じゃないぜ」そんな本の言葉が聞こえてきそうです。名作とはかくも深いものなのです、と浅いまとめで締めくくらせていただきます。


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