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【農業女子、奮闘!】 『農ガール、農ライフ』 垣谷美雨

農業というとどことなく牧歌的な雰囲気をイメージします。あたり一面田んぼが広がり、自然豊かな山々に囲まれ、ご近所さんとも仲がいい。晴耕雨読、悠々自適な生活。しかしそんなお気楽なイメージを持つのは、私が農業というものをよく知っていないからです。農業の苦労というものは、並大抵のものではない。その事を教えてくれたのが、この小説『農ガール、農ライフ』です。

主人公は1人の女性。職を失ったその日に同居中の彼氏に振られ、家も出て行かなくてはならない状態に。いきなり職、家、彼氏をいっぺんに失います。序盤からかなりの波瀾万丈さです。追い詰められた彼女。そんな時、たまたまテレビでやっていた農業女子特集を見て、運命は一気に変転するのです。その番組では田舎の地で一人奮闘する農業女子が現れます。トラクターを軽々乗りこなし、日本の農業自給率の低さを憂え、地域の人々の親切さの中で生きている。カッコいい農業女子の姿。それを見た主人公は、自分も農家になることを決意します。

農業の勉強を始め、大学時代のツテを使って住むところも確保。バイトをしながら何とか農業大学校を修了します。まさに順風満帆。このまま畑を借り、ささやかながら自立した農業ライフを送ろうと決意していた彼女でしたが、しかし彼女の前には途方もない困難が待ち受けているのです。ここから先は実際に小説を読んでいただきたいのですが、農業の表と裏、そのどちらも垣間見ることが出来る小説です。

しかし農業というのは偉大なものです。はるか古代から続く営みはこれから先も続いていくことでしょう。

情報化の波に飲み込まれ、日々ストレスを抱えている現代人にとって、農業とは一種の憧れです。しかし「なんか疲れたから田舎でのんびり農業でもして生きていきたいなあ」などと甘い考えは通用しない世界でもあります。台風が来れば大ダメージを負いますし、上手く顧客がつかなければいくら作ろうとお金が手に入りません。グローバル化が進む昨今では輸入品の方が価格が安いですから、外国の農業とも競合していかなければならないのです。

『農ガール、農ライフ』。この本のおかげで、私たちの食を支えてくれている偉大な農家さんたちの苦労をほんの少しだけわかったような気がしました。

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