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【隙間時間のお供】『5分後に意外な結末 ベストセレクション』桃戸ハル 編著

 なんとまあ、自信にあふれたタイトルでしょうか。読者に「いやこれ別に、意外じゃなくね?」と思われてしまったら、一発でアウトではありませんか。絶対に意外と思わせてやる!という作者の熱い思いが伝わってきます。

 さて、内容は5分で読めるショートショートの集大成。なるほど確かに『意外な結末』と銘打っていることに偽りはなく、最後のどんでん返しが心地いい作品ばかりです。まあ正直ちょっと『あ、これこうなるな』と予想できちゃう話もありますが、そこも含めて楽しめる作品です。ちなみに私はこの中では「失敗したキューピッド」という話がおすすめ。一見普通の恋愛小説ですが、ちょっと皮肉な結末に胸をうたれました。

 ところでこの本は、もともとは学研が出している児童向けの作品だそうです。その中からえりすぐりを選んで『ベストセレクション』と題をつけているようなのです。

 なるほど、と私は感嘆しました。5分程度のショートショートならば、本の嫌いな子どもたちも読みやすいでしょう。朝の時間に10分間の朝読なんてものがありましたが、その間に2話読めるという算段。

 それを念頭に読み直してみると、確かに言葉も敢えて平易にしていて、展開もシンプルなものが多いです。

 そして表紙のデザインも素敵です。ここでおススメしている『5分後に意外な結末 ベストセレクション』は、水色の背景に少女とドラゴン。そして古時計やハト、本、絵画などが周りにちりばめられている構成。本の中に広がる色々な世界を連想させます。

 usiさんというイラストレーターが書いているようで、このシリーズの表紙はすべてオシャレ。表紙を見ているだけでも、大冒険の予感を感じさせてくれます。これは子どもも読みたいでしょう。私も小さいころに学校図書館にこれがあればむさぼるように読んでいただろうと思います。

 もちろん、内容は大人が読んでもかなり面白いです。むしろ忙しい社会人との親和性は抜群。例えば通勤の合間、病院の待合室、昼休みの間など、ちょっとの時間があれば読めてしまいます。5分でちゃんとオチをつけてくれるので、続きが気になって仕事が手につかない!という悲劇も避けられます。

 実はこのシリーズ『5秒後に意外な結末』という派生作品まであります。いくら短くても5秒で読めるものなのか。読めたとして、果たして意外な結末になるのか。まだ拝読していませんが、この強気なタイトルに心地よさを感じてしまいます。

 という訳で『5分後に意外な結末』シリーズおすすめです。特にここで紹介した『ベストセレクション』は、他にも『黒の巻』、『白の巻』、『赤の巻』がそれぞれ発売中。ぜひ読んでみてください!

 残念ながら、私は5分で読めるこの感想にオチをつけることはできませんでしたが。



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