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海街チャチャチャが沁みる理由

【海街チャチャチャとは】 

田舎街を舞台として、都会からやってきた歯科医と掴み所のない海街班長を描くNetflixで毎週配信中の韓国ドラマだ。

全体的にのんびりとした世界観であって、前半は田舎街の日常がメイン。山あり谷ありアクションありというわけではない。しかし毎週の配信が楽しみで、つい週末を心待ちにしてしまう。一体、何が心を惹きつけてやまない作品なのだろうか。

【スロースタート】

まず大切なのは、タイミング。彼らの日常が視聴者の日常として馴染むその瞬間こそが、このドラマの魅力にハマる一つの瞬間だと思う。多数登場する海街の住人たちの性格、名前、癖、バックグラウンドが頭に入るまでには、一定の時間を要する。しかし、この設定が頭に入った上で観てみると、何気ない彼らのやりとりに号泣している自分がいる。「あれ、ここって笑うとこだよな」とか「幸せなシーンだけど涙で滲んで画面が見えないな」なんてこともよく起きる。つまりは、ゆっくりキャラ説明をしながら展開し、気付けば沼の淵に立っているようなスロースタートの作品なのだと思う。

【全員善人】

次に、悪役がとにかく出てこない安心感だ。どの登場人物もクセが強く、もしかしたらと一度は彼らの性格を疑いたくなる。だけれど、その度に疑った自分を恥じてしまう。困った時は支え合い、迷った時はその人の1番の幸せを考えて行動する人たちなのだ。それはきっと、彼らがそれぞれに傷付いた過去を持ち、その辛さや痛みを知っているからではないかと思う。知れば知るほど温かい人柄で、毎週この世界へ戻りたくなる。                        

【孤独と不安からの解放】

さらに、自由気ままに生きる男”ホン班長”が心を掴む。初対面でイカを捌かせたり、タメ口で話してきたりと、序盤はどこか冷たく威圧的にも感じる。しかし、これは彼の気遣いでありスタンスなのだと気づく。相手がどんなに偉くても態度を変えず、踏み込み過ぎない。そして困っていれば、手を差し伸べ、危機が迫ると何処と無く現れる。言ってしまえば、彼は街全体を見守り、ピンチの時は助けてくれるヒーローなのだ。そんな心の拠り所が、ドラマの中であれ存在しているということが、一人ではないと思わせてくれ勇気をくれる。                             

【田舎街と都会の融合】

都会で忙しなく働いてきた歯科医が、人間関係に疲れて想い出の残る海街へと辿り着く。彼女は面倒な関わりを回避するために海街に来たはずだが、実際にはさらに横の繋がりが深い場所へ飛び込んだこととなる。しかし、ホン班長という架け橋的な存在に助けられながら、彼女は相手を知り行動を変え始める。いつの間にか、負けないよう、誰かにマウントを取られないよう、まとってしまった鎧が彼女の言葉を鋭くさせていたのだ。          

良い変化が訪れるのは、彼女だけではない。街から人が減り、寂しい思いをしていた海街の住人たちもまた変化を遂げる。共通して、彼らはみな意見が対立した時ほど真っ正面から向き合い、対話しながら解決をしていく。面倒だけど、話し合えることが大切なのだと気づかせてくれる。                     

【一歩一歩進める恋】

顔を合わせれば喧嘩になるホン班長と歯科医だが、彼女のピンチはいつもホン班長がそっと支える。そして、ホン班長を笑顔にするのもまた彼女なのである。きっとお互い好意があるのだろうというのは伝わってくるが、無理に距離を近づけることはない。ただ、ゆっくりゆっくりと物理的にも心理的にも距離を詰めていく。その一歩一歩が、くすぐったくて幸せで堪らないのだ。

【親友が最高】

歯科医とともに海街へやってくる親友は、彼女が唯一心をさらけ出せる存在だ。悩んだ時は側で助言し、彼女の成長を自分ごとのように嬉しく思いながら背中を押してくれる。時にはあえて言葉で伝えず、彼女が自分の答えを出すまで見守ってくれ、最高の言い回しで笑わせてくれる重要な人物でもある。そんな心の友の存在が羨ましくなるドラマでもあると思う。

ホン班長を苦しめる秘密は何なのか。親友の恋は実るのか。統長の離婚の理由は何なのか。PDの恋の行方はどうなるのだろうか。

挙げだしたらきりがないが、今後の展開からも目が離せない。まるで田舎街へと旅に連れ出してくれるような作品に、もうしばらく浸かっていたい。

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