N=1の個人的経験を皆の役に立つ情報に昇華するには
はじめに
これはAgileJapanEXPO Advent Calendar 2022 6日目の投稿です。
Agile Japan/Agile Tech Expoと私と
Agile Japan/Agile Tech Expo文脈での個人的な2022年トピックスは2つ。
ひとつは「ぼくのアジャイル100本ノック」に2本寄稿したこと。もうひとつはAgile Japan 2022に登壇したことです。
Agile Japan 2022でプロポーザルが採択されたのは今回が初めて。普段出入りしているコミュニティとはまた違った雰囲気の中で話す良い経験ができました。
N=1
100本ノックにせよAgile Japanにせよ、自分のアウトプットはごく個人的経験が出発点になっています。ずっと同じ会社に属しその現場にばかり関わっている人間からの視点です。
一方、経験豊かなアジャイルコーチは様々な現場を渡り歩いています。やがてくるそれぞれの交差点を迷いの中立ち止まるけどそれでも人はまた歩き出す様をつぶさにみてきているわけです。
ひとつの会社の、ひとりの人間からの視点。N=1のサンプル数から語る言葉にいかほどの価値があるのか。自分がプロポーザルを出すときに悩むのはこの点で、様々な現場を渡り歩く経験豊かなアジャイルコーチの実践知に比べ、ひとところに留まっている自分の経験など矮小なものにすぎないのではないか、と逡巡してしまうのです。
共感が背中を押してくれる
そういった葛藤を突破させてくれるのが、周囲からの共感です。あくまで出発点はパーソナルな経験ですが、それを勇気をもって共有したときに「これ、あるよね」「わかるわかる」「なるほど、そういうやり方があるんだね!」と共感してもらう経験があると、「そうか、これは自分の閉じた世界にしか通じない方法ってわけじゃないんだ!」という勇気がもらえます。
名著が確信をもたらしてくれる
そして、自分が経験を通して感じたことが書籍で紹介されていようものなら、「これは確かな気づきだ!」と確信を得ることができるのです。
最近だと、Agile Japanでの登壇資料中でも引用しているドネラ・H・メドウズの「世界はシステムで動く」はイネイブリングチームとして現場をアジャイル実践に導くためにはどう動くべきか、という点で重要な示唆をもたらしてくれました。
レビューが「顧客が本当にほしかったもの」に近づけてくれる
「ぼくのアジャイル100本ノック」では親方さんが丁寧かつ迅速に(本当に、驚くほどレスポンスが早かった!)レビューをしてくれました。
そしてAgile Japanの講演ではJ.K.ことコサカジュンキさんが時間を割いてレビューしてくれました。
Agile Japanに限らず、最近はその講演を行う運営母体のどなたかに事前に資料レビューをお願いするようにしています。そうすることで、そのカンファレンス・勉強会を良いものにしたいと思っている人の目線でアドバイスをもらうことができるのだから、なかなかいい取り組みだなと思っています。
N=1の経験が何かを動かすかもしれない
あくまでN=1から始まった経験を勇気を持って共有することで、どこかの誰かの役に立つかもしれません。もしかしたらその人が新しいことを始めるきっかけになるかもしれません。
自分以外の誰かが共感してくれる。
先人の知恵(書籍、記事)に共通項が見いだされる。
この二つが満たされるなら、「誰かの役に立つ」情報としてのポテンシャルは間違いなくあるでしょう。
レビューを通してメッセージ強度を高める。
この作業を通して、個人的経験はニーズに合致した普遍的な実践知へと昇華されていきます。
「こんなのは誰でもやってることだし…」「自分の現場は特殊だから、共有しても皆さんの役には立たない…」
誰でもやってるかもしれないけど、あなたが躓いたところはだれかも躓くかもしれません。だったら、その情報を公開することでその誰かの躓きを防いであげられるかもしれません。
あなたの現場は特殊かもしれないけど、他にも同じように特殊な現場があるかもしれません。すくなくともあなたの現場にとっては、あなたが言語化したものは再現性のある有用なTIPSになるでしょう。
あなたのN=1には可能性が秘められているのです。ちょっとでも「共有してみようかな」とおもうなら、思い切ってやってみましょう。その思い切って行動する姿勢こそがソーシャルインパクトにつながっていくんだと、私は思います。