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「マネージャー」じゃなくても「プロダクトマネジメントのすべて」を読むべき3つの理由

プロダクトを中心に据える

「PM」という略語は、ここ日本においては「Project Manager」を指すことが多い。しかし近年では「Product Manager」の存在感が増してきているように感じる。いや、実際に組織において存在していない場合も多々あるのだが、「必要だよね、Product Manager」という文脈で語られている。

Project Managerとの混同を避けるためにPdMと略されることがあったりするこのProduct Managerの界隈は、pmconfの充実ぶりからもわかるように大きな盛り上がりを見せている。

そんな中、今年の3月に発売された書籍が、その名も「プロダクトマネジメントのすべて」。すべて、とは大きく出たな、と思ったが、帯はもっとすごい。「世界水準のPMの英知はこの一冊で完全に得られる」である。

タイトルや帯から溢れ出る自負。いざ手にとって読んでみると、たしかにそういいたくもなるような中身が凝縮された一冊だった。少なくとも、Product Managerを担っている人や、将来的に担いたいと思っているような人は必読だ。

しかし、それだけではもったいないのだ。本書はマネージャー以外にも読んでほしい(というか、マネージャーはほっておいても読むだろう)。いや、マネージャー以外が読むからこそ、意味があるのではないか。そう思っている。

この記事では、その「マネージャーじゃなくても読む理由」について解説する。

1. プロダクトづくりの「すべて」が入っている

「すべて」の名に恥じないほど、本書は網羅的な内容になっている。イノベーター理論、インセプションデッキ、ペルソナ、狩野モデル、カスタマージャーニーマップ、SWOT、AARRR、AISASを始めとして、プロダクトマネジメントの文脈で取り扱われる概念は一通りおさえられている。

こういった「プロダクトマネジメント」のポイントをおさえておくことで、自分の役割に局所最適化された動きではなく、プロダクト開発全体における最適な動き方とは何か、という視座を獲得できる。それはプロダクト開発への関わり方が「マネジメント」ではなかったとしても有効だ。

また、「PART Ⅵ プロダクトマネージャーに必要な基礎知識」においては、ビジネス、UX、そしてテクノロジーに関する基礎知識が列挙されている。知的財産やプライバシーポリシー、セキュリティといった、何か問題があったときに「知らなかったではすまされない」ものごとについては、専門領域の人間ではなくてもおさえておきたいところだ。そういった事柄が列挙されているというのは非常に意義深い。

2. 生生しい課題が紹介されている

プロダクトマネジメントという概念をいきなりぶつけてもうまくいかない、目の前の課題と照合していこう、という話や、プロダクトマネジメント不在により起こっている課題からアプローチしていこう、など、非常に具体的な課題とその解決策が提示されている。

おそらく、著者陣が実際に現場で行き当たった壁について語られているのだろう。少し慎重すぎるほどに、「組織では○○のようなことがあるかもしれない。しかし・・・」というような仮想ケーススタディが展開されている。

プロダクトマネジメントに限らない。新しいことを始めるにあたって、何も障壁がないなんてことはない。それでも、壁に行き当たると心が弱ってしまうのもまた事実だ。そんなとき、本書に書かれた生生しい課題とそこへのアプローチは、立ちすくむあなたの背中をそっと押してくれる。

ちなみに、私が一番好きな生生しい事例は「蛇足のだそ君」。これは蛇足のだそ君として抽象化されているが、実際のプロダクトづくりの現場では往々にして発生していることだ。


3. Product Managerの射程を知ることができる

当然ながら、本書の主軸は「プロダクトマネジメント」だ。プロダクト開発全般を取扱ってはいるが、それはプロダクトマネジメントの射程がプロダクト全体に及ぶからだ。

しかし、全ての解像度が高いかというとそうではない。さきほど紹介したPART Ⅵは、あくまで基礎知識が列挙されているに過ぎない。この内容だけで盤石なセキュリティが築けるわけでもなければ、自己管理型のスクラムチームが結成できるわけでもない。また、わかりやすさを重視した結果、間違っちゃいないけど違和感を覚える箇所もあった。(NoSQLの説明は、個人的にしっくりこなかった)

だが、Product Managerの視座から見ると、それくらいの解像度なのだ。いや、本書くらいの解像度で感知できていたら上出来も上出来。自分の専門分野に関しては、本書の「基礎知識」に書かれていることかそれ以下の情報量しか持ち合わせていない、と思っていたほうがいいだろう。そういうガイドラインを示してくれている、という点で大きな価値がある。

すべてはプロダクトのために

以上が、私がマネージャー以外でも本書を読むべきだ、と感じた理由だ。

400ページを超える大ボリューム。手に取るのをためらってしまうかもしれない。ましてや、自分が「プロダクトマネージャー」じゃないとしたらなおさらだ。

しかし、本書は分厚いのは確かだが、意外なほどスルスル読めてしまう。図表が豊富なのと、平易な表現でわかりやすく記述されているため、要点を掴みやすいのだ。だから、「なんか難しそう」「鈍器はちょっと・・・」と思っている人は、騙されたと思って手にとってほしい。

多くのビジネスは、「プロダクト(サービスと置き換えてもよいかもしれない)」を中心に成立している。となると、どのような形であれ、我々はプロダクトというものに関わっているのだ。すべてはプロダクトのために。

ビジネスを成功させたい、エンジニアとして成長したい、素敵なデザインを世に送り出したい、完璧な検証をこなしたい。それらもすべては、プロダクトのために。

ここまで網羅的に「プロダクト」について書かれた本はそうそうない。分厚さに気圧されず、ぜひ多くの人に手にとっていただきたい。

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