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『豚肉のリエット』レシピ徹底解説〜旨味と塩〜

今回は生徒さんのお悩みからテーマを抜粋しました。みなさんリエットって作ったことあります??簡単に言うと、やわらかく煮た豚肉をほぐして、脂身と肉の繊維を練りまとめた繊維質なパテみたいなやつで、焼いたバゲットとかにつけて食べることが多いです。

こんなイメージ

早速、生徒さんのお悩み

①豚の旨味はしっかり感じるんだけど、いまいち深みがない仕上がりになっちゃった。 
②塩加減がわからない。もうちょっと塩入れればよかったのかな? 

リエットに限らず、同じような悩みって良くありますよね。味に深みがない、塩がよくわからないって、、、

その時の材料とレシピはコチラです。

※生徒さんが参考にしたフランス料理のレシピ本に書いてあったものをそのまま書いちゃいますね。

『改良前レシピ』
【材料】(10人分)
豚バラ肉…500g
玉ねぎ…1/2
サラダ油…適量
白ワイン…200g
ブーケガルニ…1本
塩胡椒…各少々

【作り方】
1.豚バラ肉は3cm角に、玉ねぎは薄切りにする。

2.鍋にサラダ油を熱し、豚バラ肉を入れ、中火で脂が出るまでよく炒める。玉ねぎを加えて、更にしんなりするまでいため、塩、胡椒をふる。

3.ブーケガルニ、白ワインを入れ、フタをして約2時間ゆっくりと弱火で煮込む。途中、水分が、蒸発するので、様子をみながら水を何回かに分け加えひたひたになるくらいを保ちながら煮込む。

4.豚バラ肉がやわらかくなったらブーケガルニを取り除き、肉を皿に取り出す(煮汁は残しておく)

5.肉は熱いうちに、フォークの背を使って、ほぐしながら潰す。

6.4の鍋に残った煮汁の粗熱がとれたら、ボウルに5の豚肉と合わせ、塩胡椒をふり、味を整える。ボウルの底に氷水をあて冷しながら脂が固まってねっとりするまでよく混ぜる。

7.器に盛り、好みでコルニッションと軽く焼いたバゲットなどを添える。


こんな感じのレシピだそうです。さて何が問題なんでしょうね??使ってる素材はかなりシンプル。僕は材料から味をイメージすると、まさに「豚を喰らう」って印象を受けました。(まぁそれはそれでリエットなんでいいんですよ。リエット=豚肉の塊 って意味なんで)

今回は旨味に奥行きをつけたいということなので、材料選びで豚以外の旨味要素を足してあげようと思います。


このレシピの手順は概ね大丈夫ですが、少し細部が弱いですね。分かってる人が作れば自分で考えてどうにでもなりますが、「レシピ通りにつくる」だとちょっと薄味になっちゃったり(塩少々って、どのぐらいよ???って感じ)、あとは作り方によっては豚肉の深みもいまいち感じない仕上がりになってしまうかなーと。

じゃあ、このレシピはどう改善すればいいのでしょうか??生徒さんのお悩みをおさらい

◯旨味の深みやコクをつくりたい。
◯塩加減をどうしたらいいの??



僕なりに悩みが改善されるレシピに手直してみました。しっかりと旨味の深みやコクを感じて、塩加減がブレないレシピです。かつ、飽きないで食べ続けられるように味も調整しました。(基本的には、生徒さんが参考にした本のレシピをベースにしてます。)
一つ一つ作業の理由を解説しながらいきますね。

『改良版レシピ』
【材料】(10人分)
豚バラ肉…500g→3cm幅程度に切る
サラダ油…適量

玉ねぎ…1/2(100g)→薄切り
にんにく…1かけ→みじん切り
無塩バター…5g
塩…1g(小さじ1/4)

白ワイン…200g
塩…小さじ1
ブーケガルニ…1パック(ローリエ、タイム、パセリ)→お茶パックに入れる

無塩バター…15g(室温に戻しておく)
A塩…少々〜小さじ1/2程度
A黒胡椒…適量(多めが好み)
A赤ワインビネガー…小さじ1/2
【作り方】
①豚バラ肉の水気を拭き取り、フライパンにオイルを敷き、豚バラ肉の脂身の厚みが半分近くになるまで焼き、全面に焼き色をつける。焼き色がついたら鍋に移す。フライパンに残った脂を捨てたら、フライパンに水を加えて焼付きをこそげ落として鍋にいれる。

今回、最初に豚肉をフライパンで焼く目的は2つ
1→焼き色をつけること。
2→脂を落とすこと
この2つです。それ以外に意味はありません!

一つ目の「焼き色」の意味は豚肉から香ばしい香りを引き出すことです。焼き色とは「メイラード反応」と呼ばれるモノで、短時間だとアミノ酸と糖が150度以上になるとおきます。

このときに邪魔になるのが豚肉の表面についた水分。水の温度はどう頑張っても100度までしかあがりません。150度にはなれないんです。
なので、焼く前に肉についた水分をしっかりと取る必要があります。あとは水分があるとフライパンと肉がくっつく原因になります。
※「水の扱い」はまた別記事にまとめようと思います

2つ目の脂を落とすについては、煮込んだ時の仕上がりの油分を少なくするためです。今回は煮込むときにフタをしてグツグツとやっていきます。そのときに脂が水分と混ざりあって多少、乳化します。その乳化する量を減らすために最初に脂を落とすように焼いていきます。というのも、仕上げにバターを少量練りこむために、豚の脂は少し落としておきます。

あと、焼いた際に残った脂を捨てて、水で焼き付きを落として鍋に入れる作業について。コレはフライパンに残ってる豚肉の旨味を残さず使い切るためですね!(フレンチの技法でデグラッセといいます)※明らかに焦げてるところ苦味の原因になるので水を加える前に取り除きます。

②鍋に白ワインと肉が浸るぐらいの水を入れ沸かして茶色いアクを取る。

沸かして出てくる茶色いアクは豚肉から出てきてる血液や体液が固まったもの。臭みの原因になるので取り除きます。豚肉だけで煮てアク取りする理由は他の具材が入るとアクが取りにくくなるから。茶色いアクのあとに出てくる白いアクは取らなくても大丈夫!

③ブーケガルニと塩小さじ1を入れ、フタをして2時間程度弱火で煮込む。(肉がホロホロになるまで)※途中、水分が蒸発して、肉が見えてきたら水をたす。

お茶パックにハーブ類を入れると取り出しやすいのでオススメ!塩を入れるのは、煮込んでいる最中にお肉にも塩分を入れていきたいからです。

そして今回は鍋蓋をして煮込んでいきます。基本的にフレンチの煮込み料理では蓋をしないで、時々泡が出てくるぐらいの火加減で煮込んでいきます。

蓋をすると弱火でも軽く沸騰します。(鍋のサイズ等にもよりますが)沸騰させて煮込んでしまうと沸騰の泡により素材同士が擦れあって、煮汁が濁りどろっとなります。そうするとソースとしては色味も濁って汚いし、重い食感で使えなくなってしまうからです。

だけど、今回は特別、蓋ありです!、、、なぜ??

理由は2つ
1→煮汁に具材が溶け込んでも良いから
2→短時間で確実に肉をほろほろに柔らかくしたいから

一つ目が大切。リエットは最後に仕上げる時に煮汁と、お肉を混ぜ合わせて仕上げていく料理です。このとき求められるのは、煮汁とお肉との一体感です。なので沸騰させて玉ねぎを煮汁に溶かしてしまってもOK。このとき煮汁は綺麗さって特別いらないです。

二つ目の理由はおまけみたいなもの。蓋をすると弱火でも内部の温度が100度(沸騰した状態)になります。お肉が柔らかくなるのは「温度×時間」の関係があります。温度が高ければ高いほど短時間で、お肉が持ってるコラーゲン早く変化するんですね。鍋に蓋をすることで沸騰した状態であっても、蒸発による水分の減少を少なく抑えられるので長時間手間なく煮込めるからです。蓋なしでやるより「肉を柔らかくする」ということに関しては失敗はなくなります!

④小鍋にバター5gをしき、玉ねぎ、にんにく、塩1g(小さじ1/4)をいれて、じっくりと30分程度炒める。少し色づいても良いが茶色くは仕上げない!焦げつきそうだったら差水してOK!(玉ねぎの食感がなくなり、甘みを強く感じるまで)

ここでのポイントは塩を入れること。塩を入れることで野菜に浸透圧が働いて玉ねぎから水分がたくさん出てきます。そうすると、長時間炒めても焦げつきにくくなります。

こんな感じで、なめらかになるぐらいまでじっくりと炒めていきます。30分ぐらい炒めることで、玉ねぎやにんにくのグルタミン酸が凝縮され、グアニル酸が増殖し、より旨味が強い仕上がりになります!!油分にバターを選ぶ理由は、旨味に奥行きを作るためです。玉ねぎだけでもめっちゃ美味しくなります!
あと、いわゆる「茶色たまねぎ」にしない理由は、茶色く仕上げると玉ねぎが甘く香ばしい風味を持ちます。今回玉ねぎを入れるメインの理由は甘味と旨味を補強するため。なので、必要以上に色づかせすぎないように仕上げます。メインはあくまで「豚肉」。玉ねぎの風味はそこまで主張させなくて良いので色づかせすぎないように仕上げます。

⑤4を煮込んでいる鍋に入れて、継続して煮込む。

お肉がほろほろに柔らかくなるのは2時間程度はかかります。野菜に関しては30分もあれば野菜の味はスープに溶け込むので、最初から野菜を入れる必要はないんですね。

⑤ほろほろに柔らかくなった肉を取り出し、脂身と肉を分ける。肉は手又はフォークの背を使って、ほぐしていく。脂身は包丁で細かくみじん切りにする。それぞれ処理が終わったら温かいうちにボウルにバターも加えて混ぜ合わせておく。

やわらかくなったときの目安は持ち上げたら身が離れていく感じです!続いて、豚肉をほぐしていきます。フォークでも手でもOK。肉と脂身を分けて、肉は繊維に沿って粗めにむしっていきましょう!

脂身の方はみじん切りにしてあげて、筋の部分との食感の差を作ってあげます。「ごろっとした筋となめらかな脂身」食感に差をつけるのは食べ飽きを防ぐポイント!

温かいうちに荒くちぎった肉と刻んだ脂身、バター15gを混ぜ合わせておきます。(冷えたらバター混ざりにくからね)バターを加えることで、旨味に奥行きを作ります。

 ⑥残ったスープはブーケガルニを取り除き半量程度まで煮詰めいてく。(※しっかりと旨味を感じるまで)煮詰めたスープをボウルに移し、氷を張ったボウルに浮かべて粗熱をとり冷蔵庫に入れる。表面の脂が固まるので取り除いて置いておく。(※脂は最後に使う)

煮汁を煮詰めるのは大事なポイント!ここで煮詰めないでお肉と混ぜ合わせると、なんともボンヤリとした味になります!!しっかりと旨味に奥行きを感じるまで煮詰めてください!

煮汁は出てきた油を根こそぎ取り除きたいので、氷水を張ったボウルにつけて急冷します。そうすると、脂の層が固まるので、脂は取り避けて置いておきましょう。脂は保存するときの空気を遮断する蓋として再利用します。

⑥ボウルにほぐした肉類と煮詰めたスープ(ゼリー状)、Aを加えて味を整える。

塩を味を整えるために入れていきます。すでに塩はトータルで6g程度入っています。あと2.5g程度まで入れられます。
どういう計算になっているかというと、テリーヌやパテ、リエット類は食材の重さの1.4%程度の塩分濃度がちょうど良いことが多いです。


今回なら、豚肉500gや玉ねぎ100g、バター、ニンニクなど全部合わせると食材が620g程度です。それに対して1.4%の塩を加えるということです。

1.4%の塩分濃度って正直味が強く感じると思います。ですが、それでいいんです。なぜか???リエットやパテってそれだけでたくさん食べるものじゃないですよね?バゲットにつけて食べたり、ワインのおつまみだったり。
なにかと一緒に食べるっていうことが前提の食べ物なので、少し味が強いぐらいがちょうど良かったりします。

今回は仕上げる前に1%程度の塩分に調整してあります。なのでそこからはお好みで塩を入れて調整していってください。

ブラックペッパーも加えますが、これはイメージできますよね?僕はこれでもかってぐらい多めに振るのが好きです。

残すは赤ワインビネガー。これを入れる意味についてです。

ビネガーを入れなくても、もちろん美味しく仕上がります!かなり濃厚な仕上がりになると思います。ただ、ずっと食べ続けるのは豚やバターの甘味や油分が重たく感じると思います。ビネガーはその甘味を抑えてあげて、かつ香りに奥行きを出すために少量(小さじ1/2)いれます。ポイントは酸味は感じない程度に止める

はい。これは、、裏技です。。お試しください。

こうして味を整えたら完成です。

⑦保存容器に移す。※長期保存したい場合は、とりおいた脂を溶かし、器にながして脂のフタをする。

脂で蓋をして空気を遮断したら1ヶ月ぐらいはもちますよ。


使う食材は少し増やしましたが、ベースは一緒です!

メインは豚なんだけど、玉ねぎの甘みやバターのコクが加わって奥行きのあるリッチな印象に。最後に赤ワインビネガーを加えてスッキリと食べ続けられる仕上がりになってます。

味の感じ方のイメージとしては「豚肉>たまねぎ≧バター>赤ワインビネガー≧にんにく」

食べる時は、カリッと焼いたバゲットにニンニクの香りを移したバターを塗って、リエットをたんまり載せます。刻んだパセリとピンクペッパー、苦味があるオリーブオイルを回しかけたら完璧です!!(長いって?)

まとめ

旨味について。
最初のレシピだと、豚肉以外の旨味の要素が玉ねぎしかありませんでした。これが豚が強く単調な味になってしまった原因。
なので、更に旨味の奥行きをつけるためににんにくの香りを感じない程度の「にんにく」と豚脂の代わりの「バター」を加えました。

他の料理でも、メインとなる食材を殺さない程度に他の旨味要素を加えてあげると「奥行きのある味」を作れてきます。

塩について
塩は使う食材に対しての0.9〜1%程度が基本的に人が美味しいと感じる塩分濃度だったりします。

今回のリエットは少量づつ、何かにつけて食べるものなので、あえて1.4%程度の強めの塩気にしてます。加えた塩の総量は8.5gほど。

最初のレシピにあった、「塩少々」で、8.5gもの塩を入れれる人ってほとんどいないと思います。

塩って入れると塩っぱくなっちゃうと思いがちですが、そうじゃないんです。塩を入れると食材や料理がもっている「風味、旨味、甘味」の感じ方が変わってきます。それらの感じ方が最大になってから、やっと塩気を感じるようになります。スイカに塩したらまず甘くなるでしょ?塩って、塩っぱくするためのものじゃなくて、食材の持ち味を生かすためにつかってあげるものです。

塩を入れるのに不安を感じると思いますが、何度も味見をして確かめてみてくださいね♪

豚肉を2時間程度煮込みでから冷やして作るので、多少時間はかかりますが、作り置き・長期保存が可能で晩酌やホームパーティーにあると便利♪半自動的にワインが進みます♪

ワインがお好きな方は是非、お試しください。もちろんそうじゃない人も。

最後まで読んでくださりありがとうございました。


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