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ハレルヤ、ハレルヤ #1979 γ

あ、春が来るのかな、と思う
電車がホームに滑り込み
どっと人が乗り込んで来た午後。

この時期になると、
新しく東京へ越して来たんだろうな
という人を車内で見かけたりする

新入生や新入社員は
言葉にしなくとも、
新人だとわかる

それは、浮上しているから

ドラえもんは、実は地上から数ミリ浮上して
動いている
あの、スカポコラペラポコのような
奇妙な足音は
そんな理由だと知って
後から驚いたことがある

そう、浮上しているのだ
新人も新入生も。
それは本人には自覚できないほどの
ごく僅かな違いで
数センチズレていたり
数ミリ浮いているんだろう。

浮いている、
といえば、東京オリンピックでは、
空飛ぶ車が競技場を飛ぶという計画が
当初にはあって、心躍っていたものだ

その夢見た開会式も
今起きている談合の渦の中に
沈んでいってしまったのかもしれない

そういう話ではなくて
未来の話だ

先日、30代前半の人と話をしていたら
手塚治虫を知らない、という
何となく名前は知っているが、
読んだことがない、と

衝撃を受けた

手塚治虫と呼び捨てにするのは
はばかれる程の天才、偉人

特に、自分達の世代は、
ブラックジャックとか
ちょっと前の世代は鉄腕アトムとか、
ジャングル大帝レオとか、
手塚先生を知らない人は
いないんじゃなかろうかと思う。

自分にとっては
アニメーションでなく、
漫画として、読んだのは
「火の鳥」だった

小学校の同級生のSが面白いもんが
手に入ったから、家に来ないかという

何かと思っていくと
赤ん坊で、自分の妹だという
おいおい嘘だろう、と思っていたら
大きな段ボールを見せてきた

「火の鳥」
ハードカバー版
全巻がそこに、ひっそりとあった
1986年に発売されていたらしい。

小3あたりに読んだから
きっとそれだろう。

大人になって文庫本で全巻揃えてみたが
やっぱり違う
ハードカバーに迫力があった

戦争や、哲学や、人生や、宇宙が
全て入っている
バイブルのような漫画だった

それから全巻制覇するまでは、
放課後、Sの家へ毎日通いつめた
遊びに来たはずなのに、
お互い無言で漫画を読み、
赤ちゃんが泣き出したら解散
という遊びなのか、
何なのか分からない放課後活動をしていた
まさに、手塚部。

なんで急にそんな事を思い出したか、というと
先日チャットGPTについて話をしている
ラジオパーソナリティーがいたからだ

絶妙なトークで
最初、そのパーソナリティーは、
「チャットGPTを使ったら、
 鋭いことを言ってくれるから友達はいらないかもしれない」
というドキリとすることを言い出した

ただ、そのトークには続きがあって
そのパーソナリティーが
自分の名前を検索すると
続々とまことしやかに、
誤った情報が出てくる
それは、肝心の名前だったり
生年月日だったり、
出演した作品だったり・・・

「おい、これ大丈夫なのか!」
と雄叫びをあげていたのだが、
そこまでの道筋がショーになっていて
感心してしまった

手塚先生に
話を戻そう。

火の鳥・未来編
3404年。
人類の大きな決断は巨大コンピューターハレルヤに委ねられていた。
戦争をするか否か、窮地を迫られた人間は
ハレルヤに問う。
「私の計算では戦争以外にありません」
戸惑う人間。
そこには、
なぜ、言うことをきかないのか!と逆ギレする
ハレルヤが描かれている

今のところチャットGPTは
逆ギレはしない。

ただ。

初めて読んだ時に受けた、
「戦争」なんていう大事な判断を
コンピューターに人間が委ねてしまうのか?
というあの小学生の時の衝撃が、
ラジオの電波を伝って呼び起こされたのは、
何か理由があるんだろう。

人工知能という
現実のベクトルは
加速し続けて
シンギュラリティを起こすらしい。

どこへ人間は進んでいくんだろう。

そんなことを考えていたら
電車が駅に到着した
扉が開く
足を一歩、踏み出す

数センチ。
数ミリ。

私たちが、ここから少しずつ
浮上していくのかもしれない。











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