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【Shake it off. vol.033】 また旅できる日を願って ー Spain 2019.2/①

前日は大雪だった。
朝起きると案の定外は銀世界、そんなに早いフライトでもなかったが念のため早めに空港へと車で向かう。私の旅は大体こんな感じでスタートする。こんな感じというのは、何かしら旅から帰ったあと話のネタになるような(可愛らしい)アクシデントが起きる。今回もまだまだ起きるのだけど今はそれどころじゃない。滅多に見られない真っ白な景色と、これから始まる旅へのワクワク感で変なテンションだったから。兎に角車窓からの朝焼けが美しかった。




街がアートに溢れ、美食に溢れている。そんな国の人々からは情熱よりも寛容さを私は感じ取っていた。芸術と感性、そして寛容さを併せ持った国。私にとってそんなスペシャルな場所はスペイン以外なかった。完成前のサグラダファミリアをこの目で見ておきたかったし、ピカソがどんな国で生まれたのか肌で確かめたかった。そして、どこか日本に似ていると親近感の湧いていたバスク地方に足を踏み入れたい。私の愛する芸術と食を心の底から楽しみ、人々の暮らしぶりを堪能するため短い旅だが、暮らすように旅したかった。そんなことを夢見ていた私は、ちょうど2年前叶えることになる。1年後パンデミックになっているとはそれこそ夢にも思わなかったけど、あの時の旅や経験がもたらしてくれたことは今、本当に良い影響でしかなかったと心底思える。




順調に車を走らせ余裕を持って空港に到着した。ちょうど卒業旅行シーズン、若者達が目立つ。チェックインを済ませ早朝からビールをいただいた、なんて最高なんだろう!気分は既に(勝手に思い描く)スパニッシュ。これからどんな旅になるんだろう、どんな出会いがあるのだろうとお酒も話も進んだ。この後スムーズに機内に乗り込む。が、機内で3時間待機となる。前日の雪かと思いきや全く別のトラブルだったことに逆に驚く。フランス経由のフライトは12時間+トランスファーしてビルバオまで3時間の、計15時間。合間のレイオーバーがかなりタイトめだったからドキドキする。でも離陸してしまえばその後のことはどうにかなる、どうにかするしかない。旅ってそういうものだ。



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にしてもやっぱりタイトだった、タイトすぎた。初めて降り立ったCDGを全速力で走り目的地まで辿り着いたが目の前を乗るはずだったビルバオ行きの飛行機が颯爽と飛んでいった。あぁ終わった、私の旅はここで終わったのだ。と悟ったのと同時に、切羽詰まったときの英語での交渉力は凄まじいと自分を褒めたりした。CDGで一夜を過ごすのかと思っていたが成田からも連絡が入っていたこともあり、次の便(この日の最終便)に(奇跡的に)空きがあり手配してもらえ夕飯用に割引券をもらった。



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この調子でまだ目的地には着いていない。けどもう既に自分が成長できている気がした。旅に慣れている人だったらこんなのちょちょいのちょい、全て想定内で焦ることも困ることもないのかもしれない。けど全てが初めての経験で全てが想定外。暮らし慣れている環境ではそんな体験はできないだろう。旅は一種の冒険であり一期一会だとやっぱり思う。この後この日の最終便になんとか滑り込めた私たちは搭乗の列に並んだ。その列にもうアジア人はいない。見慣れた顔はなく聞き慣れない言語が飛び交い少し寂しくも感じていたとき、久々に日本語が聞こえてきた。少し前の方に並んでいた彼女は私たちの方を振り返って笑顔で日本人ですか?と声をかけてくれた。私たちのちょっぴり寂しかった気持ちがどこかに吹っ飛んでいったのが分かった。話をすると彼女は羽田からスパニッシュの旦那様と一緒に飛んできたと行った。一度日本へ里帰りし、現在暮らすバスク地方へ今は帰る途中とのことだった。彼女はどこまでも親切だった。ほんの数分の会話で絶対行くべき場所と行き方を会って間もない私たちに教えてくれた。そこはドノスティア(=サンセバスチャン)だった。実はここへ訪れる予定は一切無かった。ギュウギュウに詰め込みすぎる旅だけは避けたかった。が、あっさり予定変更!行くしかない、一期一会の出会いを無駄にしたくない気持ちがあの時絶対勝った。搭乗すると席も遠く、降りて夫婦を探し回りやっとの思いでお礼と名前だけ教えてもらい笑顔で別れた。
自宅を出てから丸一日が経っていた。




自分が思い描ける夢は、絶対実現できると思っている。けど実現する過程で思ってもみなかった場所を訪れることにもなれば、人に出会うこともあるし、それが一生の思い出になることもある。この過程にこそ夢があるんじゃないかと私は思うのだ。スペインの旅はまだまだこれから、旅は始まったばかり。





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