54通目？

知ってる？土夏区のうわさ
誰も居ない深夜の学校に居るんだって。

裏庭のあまり手入れがされてない方から
何か嫌な音が聞こえるらしいよ。

何かを零しているような……
はたまた何かを潰しているような……
分からない。分からないけど確実に居るんだって。

土夏区の言い伝えが本当なら。
きっと、あの子が。

むかし、土夏区には王子様が居たの。
それはそれは大切に育てられて
まるでお姫様のように丁寧に扱われ
愛された。

どうして王子なのにお姫様なの？
誰もがそう思ったけどすぐに理解した。

王子様には双子の妹、お姫様になる子が居たけれど
何かが原因で居なくなってしまったの。

そこから大切なものを失うことの恐ろしさを知った民達は残った王子を大切に大切にしていたそう。

そして王子が大切に扱われ17歳になった夏。
区が真っ赤に染まった。

突然パンデミックが起きて人々が消えた。
あんなに太陽の下で揺れ輝いていた白い旗も
真っ赤になった。

対立し無駄に命を落とした。

兄は妹のために身を捧げた。

それでも収まることを知らずに町は赤い海に沈んだ。

ここまでは歴史の教科書に乗ってるお話。
詳しいお話を知るのは少し難しいみたい。

深夜2時、裏庭で待ってるね