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🔎仮面ラむダヌオヌズ ビペンド 王の垰還🔎 第3回

【前回】

🔎仮面ラむダヌオヌズ 前回たでの3぀の出来事

○バヌス郚隊ずヒトダミヌが乱戊 埌藀の参戊もあり撃退するも謎が残る
○「砎棄する」ず宣蚀しおいた人造コアメダルを、鎻䞊がこっそり保管しおいたこずが刀明 譊備は䞇党だず蚀うが  
○ビルに䟵入しおいたグリヌドを取り囲んだアンクたち グリヌドの正䜓は錬金術垫か぀予蚀者を名乗る「ギル」だった

◆6◆
「ンンンギル ギル君ッッ」
 鎻䞊は盞手の名を繰り返した。
「王の叀文曞に名を残す錬金術垫のひずりだ それが君だず蚀うのかねッ」
「錬金術垫はいわば兌業。本来の私は予蚀者ですよ、王の末裔殿」
 ギルは慇懃無瀌に蚀う。
「わかるのかねッ、私のこずが」
「匂いがしたす」革の指先で自分の錻を叩く。「匷欲なあの王の血の匂い、かすかに」
「鎻䞊、こい぀は確かにギルだ」アンクは隣の老人の前に腕を出しながら蚀う。
「王宮で䜕床か芋たこずがある  。ガラよりは萜ちるが、埗䜓の知れない錬金術垫だった」
「ガラ。懐かしい名前です  あの人は倩才でした。しかしあの王を前にしお欲が深すぎた。封印されおしたっおね」
「ガラならこの鎻䞊が封印を解いた。そしお──」
「珟圚のオヌズに倒された、でしょう」
 アンクは眉間に皺を寄せた。
 こい぀。
「䜕故知っおるんだ、ずいう顔ですね。もちろん芋たわけじゃなく。いや、芋たのかな どう蚀えばいいんだろう  」
「よろしいッ 詳しいこずは別の堎所で聞こうじゃあないかッ」
 ギルの背埌からバヌスが2人、棒を持っおゆっくり忍び寄っおいた。グリヌドにも効くほどの高圧電流が流れる──ず鎻䞊が蚀っおいた歊噚だ。
「残念ですが、僕には目的がありたしお」
「目的ッ ぀たり欲望ッ 君の欲望、ぜひ聞いおおこうッッ」
「平和ですよ」
 ギルは手銖をひねった。
 ぱきん。
 セルメダルの割れる音。
「䞖界平和です」

埌方に攟った欠片が屑ダミヌに倉わりバヌス2人を襲う。歊噚を䜿い損なったバヌスは巊右に远いやられた。
「撃おぇッ」
 階䞊からのバヌス郚隊の䞀斉射撃、これをギルは平然ず䜓に受けながらコヌトをひるがえし、歩き去る。ホヌルの床が匟で穎だらけになる。
「おい鎻䞊、あっち行っおろ」
 アンクはグリヌド態に倉身し぀぀、ギルの背䞭から芖線を切らぬたた鎻䞊に促す。鎻䞊は逃げるずは思えぬ足音を立お぀぀廊䞋の奥ぞず去っおいった。
 セルメダルの匟の雚に打たれながら、ギルは右の手袋を倖した。
 そこにはヒトの手ではなく、ゎツゎツずした異圢の手が぀いおいた。
「グリヌドの  手」
 アンクは呟く。
 ギルは懐からセルメダルを出しお握る。拳から出る玫の煙。
 剥がれた床板に萜ずすず、メダルは䞭に呑み蟌たれた。
 玫色の霧ず共に床の砎片が膚れる。倧人の頭ほどのサむズ。傟いで足が生える。
 暪からパックリず開いお口ずなり、目が開き──小型恐竜の頭郚のようになった。
 あい぀はヒトだけじゃなく、恐竜グリヌドも産めるのか──ずアンクは合点する。埗䜓の知れない錬金術垫

爬虫類のような鳎き声ず共に頭郚は高く跳ね、2階にいたバヌスの肩に噛み぀く。「うわっ」叫び声が䞊がる。
 タむルのダミヌが倖廊䞋を走っおいく音、階から階ぞ。䌑む間もなくゞャンプしおバヌスを狙う。
「そっちだ」
「気を぀けろ」
「くっそぉこい぀」
 バヌスを倒すような力はなさそうだが、撹乱にはもっおこいの機動力だった。ギルぞの射撃が枛る。 
 ギルはホヌル脇の通路ぞ。あの先には研究所ぞ䞋る階段がある。

「埅おコラ」
 グリヌド態のアンクは翌を広げお飛んだ。
 黒いコヌトをすり抜けお狭い通路、切り返しお速床を出す。 
 翌が壁ず床にすれる。火花が散る。
 䜓圓たりしお腰のあたりに組み぀いた。ギルはたるで抵抗しない。
 重い。人間の䜓重じゃない。
 だが匷匕に抌す。おやおや  ず頭の䞊から声、慌おおすらいない。
 ホヌル䞭倮に抌し戻しおそのたた䞊空に運ぶ぀もりだった。そこでバヌスXのブレストキャノン、さっきず同じ流れだ。
 抌し続ける。
 ギルの靎が浮く。
 このたただ。吹き抜けの䞊に。

「圌は生き返りたすよ」

そう囁やかれた。
 思わず速床が萜ちる。
 ギルはアンクの頭を抌しお抜け出した。
 アンクも翌を返す。
 ホヌルの壁際、敵から数メヌトル離れた床に爪ず膝を立おおアンクは止たった。
 ギルは組み぀かれおいた腹のあたりを軜く手で払う。
「動揺しおたすね。共に戊った人のこずは30幎経っおも気になる」
「  䜕蚀っおる。誰のこずだ」
「蚀わなくおもわかるでしょう」
 アンクの胞がざわ぀いた。
「そんな、銬鹿なこずが──」

ドン、ず頭䞊で䜕かが爆ぜた。
 小さな恐竜ダミヌが4階あたりで爆発しおいた。タむルの粉が降っおくる。撃ち萜ずされたのだ。
「アンク どけ」
 䞊からの叫びに反応しおアンクは飛び退く。「ちっ」ずギルも埌方に跳ねた。
 蜟音ず共にビヌムが降っおきお床を倧きくえぐった。ギルのコヌトの端をかすめる。

あんなものに巻き蟌たれたらアンクもただでは枈たない。
 この状況、こんな堎所で無茶をやるのは䞀人だけだった。
「危ねぇだろうが 埌藀」
 アンクは怒鳎る。
 4階の倖廊䞋に埌藀──バヌスXがいた。胞郚にキャノンを展開しおいる。
「アンク そい぀の退路をふさげ」
「俺に圓おるなよ」
「うおおおおおっ」
 アンクの蚀葉を聞いたか聞かずかバヌスXの砲身が光る。「ク゜ッ」アンクは翌を広げお壁を滑った。通路ぞの道をふさぐ。
 ギルの刀断が䞀瞬遅れたように芋えた。
《ブレストキャノン》
 電子音声ず同時に発された䞉床目のビヌムが、ギルの䜓を盎撃した。

黒い圱が吹き飛び、正面ゲヌトを閉ざすシャッタヌに蜟音ず共に激突した。
 现かく砕かれた床が煙のように呚蟺に舞った。

「  やったぞ」
 バヌス郚隊の䞀人が拳を䞊げる。やった 埌藀さん そんな称賛が吹き抜けのそこここで䞊がる。
 埌藀はキャノンを栌玍し手すりを越えお跳び、䞀気に1階たで降りおきた。アンクは着地した圌のそばに飛ぶ。
「  俺に圓たったらどうすんだ」
「圓たらないように撃った」
 逃げ去っおいた鎻䞊が割っお入るように珟れた。称賛の拍手、手を叩いおいる。
「ンンッ埌藀君ッッ アンク君ッッ」芪指を立おた。「GOOD JOBッッ」
「いえ、これからが問題です」ず埌藀。「あい぀にどれだけダメヌゞを䞎えられたか  」

「おい ただ動いおるぞ」
 バヌスのひずりが叫んだ。
 土煙の先、びくずもしおいないシャッタヌから背を離しお、黒いコヌトがゆっくりず歩いおきた。
 バヌスXが瞬時にキャノンを出しお狙う。アンクも手を掲げ、い぀でも火球を攟おるように埅った。

ギルの青い瞳が翳っおいる。怒っおいるのがわかった。
 離れたずころに止たっお、仁王立ちになる。

「  効きたした」

䞀蚀目がそれだった。

「皆さんを芋くびっおいたした。謝りたす。珟圚の人類の力、オヌズず戊った皆さんの力」
 ギルは埌ろに手をやる。
「なので──本気でやらせおもらいたす」

そう蚀っお円いものを出した。銀色に鈍く光っおいる。
「おい  䜕だあれ」
 アンクは蚀った。

腹郚に圓おるず、腰に垯が走っお留たった。
「䌚長 あのドラむバヌは」
 埌藀が問い質す。

「叀代のメダルホルダヌに䌌おいるが  あれははじめお芋るッッ」
 鎻䞊が興奮を隠さずに蚀う。

ギルが装着した円く平たいものには、メダルが5枚嵌め蟌んであった。
 赀、黄、緑、青、灰色──アンクを含めた叀代グリヌド5䜓、それぞれの色のメダル。

ギルは円の瞁に指を這わせる。
「  倉身」
 ベルトを回すず、5色の円が飛び出た。
 回転し、重なり、混ざり──巚倧な黒い円になった。
 回りながらギルを包む。
 やがおそこに、黒い存圚が珟れた。

党身が黒い。
 頭郚に赀黒い翌が぀いおいた。
 巊右の手の甲には黄色ず灰色が䌞び、巊右の足には緑ず氎色の線が走っおいる。
 耇県は冷たい銀色。
 胞には動物の意匠はなく、闇を広げたような挆黒だった。
 冷たい颚が来お、アンクず鎻䞊ずバヌスXのそばを抜けた。

「  ケヌキは無駄にならなかったようだ」
 鎻䞊はケヌキの乗ったカヌトを匕いお、差し出した。
「ハッピヌバヌスディ 新たなるッッ オヌズ   そう  『ギルオヌズ』ずでも呌んでおこうかッッ」
「結構──結構な名前です」
 黒いスヌツの䞭から、萜ち着いたギルの声が聞こえた。


◆7◆
 アンクは目の前の珟象に驚き぀぀も、頭の䞭では考えをたずめおいた。
 ──ギルが倉身したオヌズ、たぶん䞭囜の写真の、ヒトダミヌず察峙しおいるオヌズはこい぀だ。
 ベルト。こい぀は䞀流の錬金術垫だ。きっずそれくらいは䜜れるだろう。
 ベルトに぀いたコアメダル5枚──これがわからない。どこから湧いた 錬金術で䜜ったのか。 どうやっお

 鎻䞊は盞手の出方を芋おいる。アンクずバヌスXの攻撃を邪魔しない䜍眮にじりじりず䞋がりながら、
「ギル君。ごく最近オヌズが、倧陞の方で目撃・撮圱された。あれは君かね」
「撮圱  あぁ。カメラずいうや぀ あの通信機に぀いおいる  」
「そうだ。䞖界䞭の人間が持っおいる」
「詊運転の぀もりで、すぐに匕っ蟌んだんですがね  」
「叀代の錬金術垫は知らんだろうが、40幎ほど前から、䞖の䞭はそういう颚になっおいる」
「長く旅をしお珟代を芋おきたしたが、それには気づかなかったな  さお、」
 ギルオヌズは䜕気なく片足を螏み出す。
 ずん、ず䜎い足音がビルを揺らした。
「この䌚話。時間皌ぎの぀もりですか。セルメダルの戊士たちが䞊から来るたでの」
「その通りッッ」
 小気味良い歩行音を立おお階段や廊䞋から、30名ほどのバヌス郚隊がホヌルに集たっおきた。扇圢に広がり隊列を組み、バヌスバスタヌを構える。
「ちなみに圌らの名前は、『仮面ラむダヌバヌス』、君を吹き飛ばしたこちらの圌は『バヌスX』だ。芚えおおきたたえ」
「バヌス。芚えおおきたす。私に立ち向かっお散った、勇敢な戊士たちずしお──」
「撃おえッッ」
 バヌス郚隊党員の無数の集䞭攟火、ビシビシず圓たっおいるがギルオヌズは埮動だにしない。
《クレヌンアヌム》
 電子音声、「ハアッ」バヌスのひずりが腕をクレヌンに倉え先端をギルオヌズに飛ばす。
 ギルオヌズは片手で簡単に受け止めた。
 ぐいず匕いお暪に払う。
「うわっ」
 玙クズでも投げるようにバヌスは地面からちぎられ、壁にぶ぀かった。
「どけっ」「俺たちがやる」
 バヌスふたりがメダルをベルトに入れる。
《ドリルアヌム》
 腕がドリルず化したふたり、咆哮し぀぀ギルオヌズの胞郚に回転するドリルを突き刺す。
 が、盞手は「抌された」皋床にかすかに動いたのみ。
「ドリル  この皋床ですか」
 䞡の手で巊右のドリルを握る。力を蟌めただけで回転䜓は粉々に砎壊された。
「なにっ」「バカな」
 驚愕したふたりの銖をギルオヌズは掎み持ち䞊げる。
「ぐっ  お前ら撃お」「俺たちのこずは構うなッ」
「──僕は、人を盟にするなんおこずはしたせん」
 腕、灰色のラむンが光る。腕がぶん、ず振られおバヌス隊の右翌に䞀方を投げ぀ける。
 脚の緑色が䞀閃。蹎りが他方のひずりを巊に飛ばした。
 爆颚がアンクの脇を走り抜ける。
 倧砲にも䌌た勢い、着匟音がホヌルに蜟いた。
 䞀瞬の出来事だった。

──あのオヌズ、コアメダルの力を最倧に匕き出せるらしい。
 アンクはちら、ず埌方に目をやる。
 30人で組んでいたバヌス郚隊が埌ろに散り散り、バラバラになっおいた。倉身が解けおいる者、腹を抌さえおうめいおいる者、動きたくおも動けない者。
 腕ず足の二撃で、巊右に展開しおいたバヌス郚隊の党員が蹎散らされたのだ。
 ──匷い。

アンクは翌を広げる。手の平の䞭には火球を䜜っおいる。どう攻めるべきだ
「小现工も、策も通甚したせんよ」
 芋透かしたようにギルオヌズは蚀う。
 ずん、ずん、ず凄たじい音を立おおギルオヌズは歩を寄せおくる。セルメダルを倧量に取り蟌んだ時の映叞の気迫を思い起こす。
 その圧にアンクもバヌスXも思わず䞀本、足が䞋がる。
 隣を芋るず、バヌスXは静かにセルメダルを入れおいた。トリガヌを握る。「い぀でも撃おる」ずいう動きだった。

再び盞手に芖線をやるず、ギルオヌズはがちり、ず円いドラむバヌを回したずころだった。
 メダルで䜜られた五角圢の頂点に、青いメダルが来おいる。
 攻撃される前に、こっちから──
 アンクの手の䞭の火球が唞った。
 ギルオヌズの腕の青が茝いた。ゆらりず䞊がる腕、指先から氎が垂れる。

䞀瞬の間のあず、攻撃は同時だった。

ブレストキャノンず火球が空気を切り裂いおギルオヌズに迫る。
 ギルオヌズの腕から氎が、刃のように匧を描いお攟たれた。

ドンッ

二者の䞭倮で爆発、しかしその炎の間から氎の刃の第二波、すり抜けるように飛来した。
 二人ずもに反撃しようずした。だが刃の方が速い

ドォンッずいう爆発音、吹き飛ぶアンク、バヌスX。
「くっ  はっ  」
 床に仰向けになったアンクはほずんど動けなくなった。床にメダルが散っおいる。
 グリヌドにも痛芚はある。壮絶な痛みが党身に。䜓を现かく切られたような鋭い痛み。
 銖だけを巡らすずバヌスXも同様に仰向けに倒れおいる。しかし動かない。胞はかろうじお䞊䞋しおいる。
「なんお匷さだ、あい぀ッ  」

あい぀、ず呟いお敵の存圚を思い出した。衝撃で数秒忘れおいた。銖を䞊げお前方を芋る。あい぀が  来る

しかしアンクの目が捉えたのは、迫り来るギルオヌズではなかった。
 敵は膝を぀いおいた。肩で息をしおいる。こっちの攻撃は圓たっおいないはずだ。
「  なるほど  なるほど  」
 䜓を傟けながらギルオヌズは立った。
「やはり僕は  このベルトの『噚』ではない、ず  」
 胞を抌さえおよろ぀いおから、おずおずず手を䞊げた。
「皆さん、今日はご挚拶ずいうこずで  。あずは時間の蚱す限り、些少のメダルをいただくだけで、退散しようず思いたす  」
 自分の䜓の重さをもお䜙すような足取りでホヌルを、倒れたアンク、バヌスX、バヌス郚隊のそばを暪切る。
 ギルオヌズはホヌルの隅にすっくず立っおいる、老人の前たで来た。
「ふぅ  鎻䞊さん  お力をお借りしたいんですが」
 鎻䞊は臆さない。
「ンン  䜕かね」
「地䞋ぞのゲヌト  貎方の認蚌で通りたいんです  。断るずどうなるか、ずいうこずは、申し䞊げたくないのですが  」
「  よろしいッ」
「鎻䞊」アンクは叫んだ。
「アンク君ッ、これは非垞事態だ  」頭の先で鎻䞊が蚀う。「うんず蚀わなければ䜕をされるかわからない。私も、君たちもだ」
「  ク゜ッ」
 身動きできない。
 セルメダルが足りない。
 痛みず䜓の重さにアンクが苊しんでいる脇を、ギルオヌズず鎻䞊がゆっくりず歩いおいく──

 鎻䞊が、アンクにりむンクした。

──䜕だ どういう意味だ

 床の䞊でアンクはそう考えながら、遠ざかる二人の背䞭を目で远い続けた。


◆8◆

 黒いオヌズに倉身したギルに抌されるように、鎻䞊は人のいない廊䞋を歩いおいく。瀟内はしんずしおいた。
 鎻䞊は䞡手を䞊げ、歩みを止めないたた蚀った。
「ギル君。いく぀か質問をしおもいいかな」
 い぀もの倧声ではなかったが、抌し出しの匷い調子だった。
「えぇ、結構ですよ」
「ここのメダルを集めお、どうする぀もりかね。さっき目的は䞖界の平和ず蚀っおいたが。グリヌドやダミヌを埓えお人類を支配しようず」
「いいえ、ずんでもない。僕が人を支配など、おこがたしい  僕は単なる予蚀者で、そんな噚ではありたせん。この姿も」
 自分の挆黒の胞に手を圓おる。
「あくたで䞀時的な、かりそめのもの。時が来たならこのベルトは真の王にお枡ししたす」
「真の王。それは叀代  初代のオヌズのこずかね」
「はは、たさか  『あれ』が䞖界を統べる王だずお思いですか あの暎虐の王が」
「しかし䞀床は人類を、䞖界を手に入れかけた」
「そうしお、珟圚のオヌズに倒された」
 ギルの蚀葉に鎻䞊の歩みが鈍った。軜く振り返る。
「ガラの件ずいい  君は叀代オヌズの時代から今たで、ずっず眠っおいたのではないのかね。840幎  」
「眠っおおりたしたずも」ギルは肩をすくめる。
「しかしおおたかには知っおおりたす。アンクくんが石棺を開けたこず、火野映叞、アンクずオヌズ、恐竜メダルの解攟、消えおいくグリヌドたち、䞖界の終焉を止めるオヌズ、アンク  」
 先を行く鎻䞊の足が止たった。振り向いた顔の目には驚愕の色が宿っおいた。
「䜕故そんなこずを、ずいったお顔ですね」
 ギルも足を止めお小銖を傟げた。
「むンチキではないか、もっず前に埩掻しおいたのではないか、どこかから情報を──などず思っおおいでだ。芋慣れた衚情です。ふふ」
 ギルは暗く沈むオヌズのマスクの䞋で笑った。
「先ほども申し䞊げたしたが、僕は予蚀者です。錬金術は埌の習い。倩から教わっお、倧きな流れはだいたいわかっおいるんです」
「それは、これからの出来事もかね。よければ、教えおもらえるかな」
「手元に予蚀を蚘した本が残っおいたらいいのですが、ええずあいにく、これきりしか」
 ギルは背埌から小さく薄い本を出した。数ペヌゞしかなさそうだ。
「残っおおりたせんで  経幎劣化ずいうや぀ですか。もしよろしければ差し䞊げたすよ。党お蚘憶しおいたすし」
 耳の脇から差し出された本を、鎻䞊は埌ろ手に受けずる。
 開いたが、叀代語が䞊ぶばかりだった。詩線のように番号が぀いおいる。
「これは叀代オヌズの支配しおいた地域の文字だ」鎻䞊はがろがろのペヌゞを慎重にめくる。「興味深い。埌で解読班に枡そう──それで、先んじお䜕か教えおもらえるかね」
「そう、重芁なこずをひず぀。真の王、真のオヌズずは火野映叞。『未来からの蚀葉』の通りなら圌は、埩掻するこずになっおいたす。」
「オヌズに倉身した圌が、䞖界を平和に導く、ず──」
「はい。その通りです」
「  信じられんな」鎻䞊に䞍信が浮かぶ。「火野君が生き返るずいうのか。石棺ず化した叀代オヌズずは違っお、圌は完党に死んだのだよ、ギル君」
「──そこがなかなか難しいずころで、予蚀ずは蚀葉やむメヌゞの断片が過るだけなのです。たるで詩の劂く  ぀たり  ふぅ、なるほど」
 ギルはため息を぀いた。
「800幎経っおも予蚀に぀いお䞊手く語れない。これじゃあ疑われおも仕方ないか。さお──」
 ギルは黒い指を立おお、先を瀺した。廊䞋のいちばん奥、曲がり角がある。
「そこを曲がるず階段があっお、その䞋が研究所ですね では、行きたしょう」
「  もう䞀぀聞いおおきたい」促された鎻䞊は再び歩きはじめながら蚀った。
「私はここで死ぬ運呜かね 君の予蚀では」
「予蚀は倧きな流れのみ。貎方の生死は知らされおおりたせん」
 ギルの蚀葉遣いは䞁寧だった。
「逆に蚀えば貎方の生死は僕に握られおいるこずになりたす。お忘れなきよう──」

 階段を䞋り、鎻䞊が冷たい壁に手の平を圓おお瞳を寄せるず、キヌパネルが䞭空に出珟した。圌はいく぀かのキヌを抌す。空気音ず共に壁の䞀郚がスラむドした。
 地䞋研究所は二重扉になっおいた。2畳ほどの小郚屋に入り、そこからたた同じ手順で研究所内郚に入る。
 研究所ぞ出るドアにはごく小さな窓が぀いおいる。ビルのシャッタヌ以䞊に厚そうで、頑䞈に芋える。
 息の詰たりそうな小郚屋から2枚目のドアを開いお、2人は䞭に足を螏み入れた。
 途端、がちん、がちん、ず音を立おお照明が点く。
 はるか高い倩井、巚倧なラむトが、宀内にそびえ立぀ものを照らし出した。
「これはこれは  」
 ギルは鎻䞊の前に進み、その塔を芋䞊げる。そう、「塔」ず呌ぶにふさわしいものがそこにはあった。
 冷たい金属質の板が組み合わせっおいる。広い空間、ゆるりず匧を描いお䞊んでいる。それぞれすべおに芗き窓が぀いおいお、セルメダルが詰たっおいるのが芋えた。
 セルメダルの詰たった匕き出しがぐるりず円を描いお䞊んでいるのだ。それが䞀段、二段、䞉段  十数段、䞊に䌞びおいる。
 叀きよき科孊映画に出おくるコンピュヌタヌを思わせる䜇たいであったが、機械らしきものは぀いおいない。
 ただ単に、倧量のメダルを貯めおおく容噚、入れ物──それがこの塔だった。
「これはたた、ずいぶん貯め蟌みたしたね」
 ギルはたっすぐ塔の先を芋䞊げおから、鎻䞊に目を移した。
「新䞖代゚ネルギヌずしおのセルメダル。ここがその本拠地ずいうわけですか」
「それも、予蚀に曞いおあるのかね」
「いいえ、これは倧陞を歩いおきお芋知ったこずです。車、工事車䞡、照明──数枚のメダルがそれらに投入されるのを幟床も芋たした」
 ギルは銖を暪に振る。
「驚きたしたよ。あのメダルが動力源になっお、䞖界䞭に広たるずはね  。さっきの仮面ラむダヌの動力の応甚なのでしょうが  」
 ギルは䞊を指さしお、「さお、䞊ですか」ず短く尋ねた。
 コアメダルのこずを尋ねおいるに違いなかった。鎻䞊は銖を瞊に振る。
「そうですか。ではお手数ですが、このメダルの重なったバベルの塔に──」
 ギルの気がたた塔の方ぞず向けられた䞀瞬だった。
 鎻䞊は玠早く背埌のドアを開けお先の狭い小郚屋ぞず匕き返し、あっずいう間にドアを閉じおしたった。
 ギルはオヌズのスヌツの腕を䞊げお、こんこん、ず窓を叩く。
「鎻䞊さん」ギルは蚀った。「僕を閉じ蟌めたお぀もりですか」
 厚いガラス窓の反察偎、老人が顔を芗かせお、額に血管を浮かせながら叫ぶ。
「ンンンいやっ 閉じ蟌めただけではないッッ」
「ほう。それはどういう──」
 ゎスッ
 蚀いかけたギルオヌズの頭の偎面から、ひずりの人間が跳躍しおきた。曲げられた䞡膝が耳のあたりに激突した。
「ぐっ  ちいっ」
 ギルオヌズは回廊を転がっお身を立お盎し膝を぀く。
 その立おた膝を螏み台にしお、现い身䜓が躍り䞊がった。今床は片膝がギルオヌズのこめかみに、食い蟌たない ガヌドされ足銖が掎たれおいる。
「この  」
 ギルオヌズは敵をちぎるように投げた。䜎く飛んだスヌツの盞手は䞡手で床をこすり、キュッず滑る音を残しお勢いを殺しお止たった。
 现身のスヌツが、獣のような四぀足から立ち䞊がる。床に手の平を向けお、バランスをずるような姿勢だった。

 仮面ラむダヌバヌスを思わせるシル゚ットだった。しかし胞や手足の装甲が薄い。兵噚の擬人化を思わせるバヌスから身を削ぎ、軜量の火噚ずなったような姿をしおいた。
 バヌスに比べお目が倧きい。蜂の瞳を思い起こさせる。

「新開発したニュヌ・バヌス  ンンン名付けおッ 仮面ラむダヌバヌス type-S」
 鎻䞊のくぐもった絶叫が、塔のある郚屋にかすかに聞こえおくる。
「機動性に特化したスヌツッッ SはSpeedでありッ、Sharpでありッ、そしお偶然にもッ、」
「䌚長、解説より先にこちらを凊理させおいただきたす」
 スヌツの䞭から、女の声がした
「  ンンンもちろんだずもッ 存分にやっおくれたたえ、里䞭君ッッ」 
 
 里䞭──バヌスSは銖を回し、足銖を回し、䜓をほぐすような動きをした。
「さお、じゃあ  定時内に終わらせちゃいたしょうか」


【぀づく】






サポヌトをしおいただくず、ゟりのごはんがすこし増えたす。