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2024年東京都知事選挙レポート

 2024年6月20日告示、7月7日投票で東京都知事選挙が行なわれた。結果は小池百合子・都知事の3選であったが、史上稀に見る混戦というか場外乱闘が巻き起こった都知事選だったといえる。その都知事選をレポートする。

 8年前、小池百合子候補は「7つのゼロ」を公約に戦い当選した。それは次のようなものであった。

1 待機児童ゼロ
2 残業ゼロ
3 満員電車ゼロ
4 ペット殺処分ゼロ
5 都道の電柱ゼロ
6 介護離職ゼロ
7 多摩格差ゼロ


 このうちゼロを達成したのは「ペットの殺処分」のみ。「待機児童」「都道の電柱」「満員電車」は数字的には改善が見られるものの、「残業」と「介護離職」については却って数値が増えている。
 そして、唯一検証のしようがないのが「多摩格差ゼロ」である。ただ、現在多摩地域に在住し、西多摩地域で勤務している私の肌感覚としては、多摩格差は全く解消されていない。この都知事選においても、西多摩地域に候補者はほとんど来なかったし、社会問題となったポスター掲示板ジャックともほぼ無縁であった。

 例えば、6月20日の告示日。昼頃、西多摩のとある掲示板を見に行くと、わずかに2枚。

 その日の夕方でも5枚。マスコミで“有力候補”とされた候補者でもなかなか初日に西多摩までポスターを貼りには来れないようだ。

 今回の都知事選、敢えて多摩地域に留まり、多摩格差がどうなっているのかを見届けることにした。


◆東京都知事選挙立候補者一覧

 かねてから予想されていた通り、今回の都知事選、立候補者が乱立した。最終的には56人が立候補。もちろんこれは史上最多の立候補者数だ。
 立候補者は次の通り。

1 野間口 翔 36 無所属・新
2 澤  繁実 47 無所属・新
3 大和 行男 46 無所属・新
4 木宮 光喜 71 未来党・新
5 小池百合子 71 無所属・現
6 内海  聡 49 市民がつくる政治の会・新
7 石丸 伸二 41 無所属・新
8 小野寺紘毅 79 忠臣蔵義士新党・新
9 新藤 伸夫 75 お金をみんなへ シン独立党・新
10 竹本 秀之 68 無所属・新
11 桜井  誠 52 日本第一党・新
12 ドクター・中松 96 無所属・新
13 安野 貴博 33 無所属・愼ふるふ
14 清水 国明 73 清水国明と東京都の安全な未来をつくる会・新
15 AIメイヤー 51 AI党・新
16 桑原真理子 50 無所属・新
17 後藤 輝樹 41 ラブ&ピース党・新
18 河合 悠祐 43 ジョーカー議員と投票率を上げる会・新
19 福本 繁幸 57 無所属・新
20 黒川 敦彦 45 つばさの党・新
21 桑島 康文 62 核融合党・新
22 田母神俊雄 75 無所属・新
23 蓮舫    56 無所属・新
24 内藤 久遠 67 無所属・新
25 内野 愛里 31 カワイイ私の政見放送を見てね・新
26 石丸 幸人 51 石丸幸人党・新
27 尾関 亜弓 43 ポーカー党・新
28 小松  賢 36 ゴルフ党・新
29 加賀田卓志 47 覇王党・新
30 福永 活也 43 NHKから国民を守る党・新
31 犬伏 宏明 48 NHKから国民を守る党・新
32 武内  隆 61 NHKから国民を守る党・新
33 遠藤 信一 59 NHKから国民を守る党・新
34 上樂 宗之 45 NHKから国民を守る党・新
35 二宮 大造 53 NHKから国民を守る党・新
36 中江 友哉 32 NHKから国民を守る党・新
37 舟橋 夢人 58 NHKから国民を守る党・新
38 山田 信一 53 NHKから国民を守る党・新
39 加藤 英明 65 NHKから国民を守る党・新
40 草尾  敦 55 NHKから国民を守る党・新
41 津村 大作 50 NHKから国民を守る党・新
42 横山  緑 46 NHKから国民を守る党・新
43 前田 太一 38 NHKから国民を守る党・新
44 南  俊輔 39 NHKから国民を守る党・新
45 福原志瑠美 41 NHKから国民を守る党・新
46 木村 嘉孝 49 NHKから国民を守る党・新
47 三輪 陽一 42 NHKから国民を守る党・新
48 松尾 芳治 46 NHKから国民を守る党・新
49 穂刈  仁 57 無所属・新
50 小林  弘 49 無所属・新
51 加藤健一郎 74 無所属・新
52 ひまそらあかね 41 無所属・新
53 向後 真徳 62 無所属・新
54 牛窪 信雄 51 無所属・新
55 古田  真 77 土頭を働かし最高裁裁判官5人を弾劾する党・新
56 アキノリ将軍未満 37 ネオ幕府アキノリ党・新

 大量立候補の原因の1つがNHKから国民を守る党。公認候補だけで19人を擁立した。その他、「カワイイ私の政見放送を見てね」、石丸幸人党、ポーカー党、ゴルフ党、覇王党と、関連団体の候補者も5人。合計24人がNHK党関連ということになる。

 ポスター掲示板には貼るスペースが48名分までしかなく、どうなるのかと思っていたが、なんと増設は行なわないという。その代わり、49番目以降の候補者はクリアファイルにポスターを入れて、掲示板の枠以外に取り付けろというのだ。

 まさか、こんな処置になるとは想像もしなかった。

枠外にもポスターが貼られている

 地方選挙では60人以上が立候補することもざらにある。例えば、2023年の統一地方選挙・大田区議会議員選挙には82人の立候補者があった。もっと大人数のポスターを貼れる掲示板の設置も可能だったと思うのだが…。

 マスコミでは、現職の小池百合子都知事、蓮舫・前参院議員、石丸伸二・前安芸高田市長、田母神俊雄・元航空幕僚長の4人を“有力候補”と見なしていた。その他、新聞によってはタレントとして知名度のある清水国明候補、AIエンジニアの安野貴博候補をあげているものもあった。その他の50人の候補については、ほとんどのマスコミは黙殺していた。

◆小池百合子都知事

小池百合子・東京都知事

 今回の都知事選は、小池百合子都知事の2期8年の信を問うものである。カイロ大学卒業という経歴が詐称ではないかと問題ともなったが、なんだかんだで最有力候補であることは間違いない。政党の推薦は受けなかったが、自民党、公明党、国民民主党が自主的支援。また、連合も推薦するなど盤石であった。

 多摩格差ゼロに対して批判があることを意識してか、今回の小池都知事は街宣を絞る代わり、奥多摩町や八丈島といった辺境の地での街宣を最優先としているようであった。

 また、生成AIを利用した「AIゆりこ」を活用していた点も特徴であった。

◆蓮舫・前参院議員

蓮舫・前参院議員

 小池都知事の最大の対抗馬と目されていたのが、立憲民主党の蓮舫・参院議員。立憲民主党、共産党、社民党、生活者ネットワーク、緑の党グリーンズジャパン、新社会党が支援する実質的な野党統一候補。
 各地での街宣には多くの聴衆を集めていた。私も立川駅北口での街宣を見たが、かなりの人手だった。

蓮舫・前参院議員
立川駅北口での街宣

 立憲民主党の泉健太代表も応援演説に立つ。

泉健太・立憲民主党代表(右)

 続いて蓮舫・前参院議員がスピーチを行なったが、ずっと大声で怒鳴り通し。正直、怒られているようで怖かった。

蓮舫・前参院議員

 もちろん、これだけ聴衆を集めることはすごい事である。ただ、聴衆の数と得票は必ずしも一致しない。例えば、2016年参院選東京選挙区に立候補していた三宅洋平候補は、「選挙まつり」と称して渋谷駅前をお祭り騒ぎのようにしていたが、実際の得票は、同じ渋谷駅前で寂しく演説していた横粂勝仁・元代議士より少なかった。

 また、蓮舫候補を支援する人が自主的に駅前等で街宣する“ひとり街宣”というものも各地で目撃されていた。しかしこうした盛り上がりと裏腹に、蓮舫候補の勢いは次第に失速していった。

◆石丸伸二・前安芸高田市長

石丸伸二・前安芸高田市長

 蓮舫候補に代わって勢いを増していたのが、石丸伸二・前安芸高田市長である。YouTubeやTikTokといったネットを駆使し、若者を中心に支持を広げていった。

 その一方で、過去の失策や失言がいろいろと取り沙汰された。投票後ではあるのだが、石丸候補がインタビュアーと話が噛み合わないことが注目を集めた。

 相手の質問を繰り返したり、言葉尻をとらえてそれに固執したりとまったく会話にならない。
 これに対して、タレントのふかわりょうは「石丸さん、サブウェイ注文できるかな。」と心配していた。

 こうした石丸候補の発言が、小泉進次郎代議士の「小泉構文」に準え、「石丸構文」と呼ばれるようになった。
 しかもこの時に限らず、石丸候補は以前から「石丸構文」を使っていたようなのだ。

 石丸候補は恐ろしく理解力が低いのか、なんらかの病気ではないのかと疑ってしまう。

◆田母神俊雄・元航空幕僚長

田母神俊雄・元航空幕僚長

 田母神俊雄・元航空幕僚長が今回、有力候補に数えられているのは、2014年の都知事選で健闘したことによる。確かに当時の田母神候補には勢いがあった。しかし、それから10年経っている。その間に田母神候補は選挙違反で有罪となり、公民権を剥奪されていた。年齢も75歳と高齢となった。さすがにその頃の勢いは無いだろう。
 八王子駅北口で田母神候補の街宣を聞いた。駅前のデッキにそれなりに人を集めていた。日の丸を持った人も目立つ。

田母神俊雄・元航空幕僚長

 私は10年前にも田母神候補の街宣を聞いているのだが、その頃に比べるとだいぶ歳を取ったという印象。だいいち、呂律が全く回っていない。

田母神俊雄・元航空幕僚長

 しかも話しているのは国防のことばかり。国防ってそもそも都知事の仕事だったっけ? ようは東京都から国に働きかけようってことらしいのだが、一瞬同じ話をずっと聞かされているような錯覚を受けた。

 最後は「私はこのような強面(こわもて)ですが、本当は“いい人”なんです。」と締めくくったが、10年前も同じことを言っていた。

◆清水国明候補

清水国明候補

 タレントとして知名度のある清水国明候補。一部では有力候補にも挙げられていた。長年タレント活動と並行して被災地支援活動を行ってきたことから、災害対策を第一の目標に掲げていた。

 告示直前に「BOOKOFF」での架空買い取りが明るみに出た。清水候補が永年BOOKOFFのCMに出ていたからといってその事で批判するのもどうかと思う。

 立川駅前で清水陣営がビラ配りをしているところを見かけたが、残念ながら候補者本人は不在であった。

◆安野貴博候補

安野貴博候補

 安野貴博候補は33歳のAIエンジニアで作家。知る人ぞ知るといった存在だったが、一部の新聞が有力候補として取り上げたことでも注目を集めた。
 台湾のオードリー・タン元デジタル相からも支援を受けたというが、選挙期間中にAIを駆使して公約のアップデートを計っていた。今回の都知事選、小池都知事が「AIゆりこ」を発表したり、「AIメイヤー」を名乗る候補者が立候補するなど、「AI」という言葉が随所で見られた。今後の重要なキーワードになるのかもしれない。

◆ドクター・中松

ドクター・中松

 選挙期間中に96歳の誕生日を迎えたドクター・中松こと中松義郎候補はこれが8度目の都知事選。年齢もそうだが、立候補回数も過去最高記録だろう。

 今回ドクターは街頭演説といった従来の選挙戦は行わず、AIを用いた「答えマース」が本人の代わりに有権者とやりとりをするという画期的な戦術を用いていた。

 それでも最終盤には街頭演説も行なっていたらしい。私もスケジュールが合えば行きたかったのだが、残念ながらドクターは多摩地域には来てくれなかった。

◆内海聡候補

内海聡候補

 医師の内海聡候補は告示日に西多摩にもポスターが貼られていた。どうやらしっかりとした組織を持っているようだ。政治団体「市民がつくる政治の会」の公認だが、多くの地方議員が支援しているようだ。

 そんな中には、反カルト宗教の長井秀和・西東京市議や、過激な反ワクチン活動家の池田利恵・日野市議といった癖のある人が揃っている。吉野敏明氏、武田邦彦氏、赤尾由美氏ら参政党を離党した人たちも加わっており、右翼+オカルトのハイブリッドといった感じだ。

◆桜井誠・日本第一党党首

桜井誠・日本第一党党首

 桜井誠・日本第一党党首は過去2回の都知事選では10万票以上を獲得する健闘を見せていた。しかしその後、参政党や日本保守党といった右派政党が次々と立ち上がる。今回の選挙にも右派の大物・田母神俊雄候補が出馬。他にも内海聡候補、暇空茜候補といった右寄りの候補者がおり、桜井誠候補は今ひとつ存在感を出せずにいた。

◆暇空茜(ひまそらあかね)候補

暇空茜候補のアイコンのイラスト

 東京都知事選挙に限らず、事前の表明なしに告示日当日いきなり立候補を届け出てくる候補者がいる。今回の都知事選では、「暇空茜(ひまそらあかね)」候補がそんなサプライズの候補者だった。
 暇空候補が届け出をした際、報道陣がざわついたという。確かに誰も彼の立候補は予想していなかった。

 暇空候補は、ゲームクリエイターでYouTuber。アイコンに美少女のイラストを使用しているが男性だ。ネットではそれなりに知られた人物である。もっとも、Colaboとの対立など、何かとトラブルのある人物としてだが…。
 最近だと、 2023年新宿区議選に「WBPC問題を考える貝」で立候補した山下ギルド候補(落選)が、ポスターに暇空候補のイラストを無断で使用したとしてトラブルになっている。

2023年新宿市議会議員選挙 山下ギルド候補

 暇空候補は、顔出しをしていない。そのため、政見放送を申し込まず、街宣活動も行なわない。それどころか、選挙ポスターも掲示しないという。もちろん、当選すれば顔出しをするということではあるが、選挙に出ても謎の人物のままだ。
 川松信一朗・自民党都議は、暇空氏を「行政経験はないものの、圧倒的に都政に係る資料を読み込んでいるのではないだろうか」と持ち上げている。

 なるほど彼は都政には詳しいのかも知れない。だが、都知事選挙についてはまったく明るくないようである。例えば、彼は得票の目標を聞かれて600万票と答えている。

 これまでの都知事選で600万票を獲得した候補者は存在しない。過去最多の得票は2014年の猪瀬直樹候補の4,338,936票。そもそも有権者が全員投票するわけではなく、都知事選の投票率はだいたい50%前後。今世紀では、最高が2012年の62.60%、最低が2003年の44.94%となっている。前回は55.00%だった。今回は候補者乱立で多少投票率上がるだろうから60%ぐらいで投票総数が720万票。だからその半分で360万票というのが妥当な答え。もちろん、暇空候補がそこまで得票を挙げられるとは到底考えられない。2007年参院議東京選挙区で、ネットのみで選挙運動を行なった神田敏晶候補が11,222票にとどまったことを考えると、現実的な予想としてはせいぜい2〜3万票ではないだろうか。

 それでも、暇空候補は自身が有力候補に入らなければならないと語り、自身を黙殺するマスコミへの不満を滲ませる。

 だが、よく考えて欲しい。そもそもネットでしか選挙運動をしないのではマスコミも取り上げようがないではないか。正直、暇空候補の知名度はそこまで高いわけではないし、しかも良い印象ばかりというわけでもない。その上、顔出しもしない、ポスターも無いとなれば、それで支持を拡大することは難しい。それでいて「有力候補」を望むとは、何を勘違いしているのだろうか。

 暇空候補は多くの訴訟を抱えており、逮捕が近いとの噂もある。今回の都知事選で勝たなければ逮捕されてしまうとも語っている。

 それが事実なら、残念ながら落選濃厚なので、結局逮捕されてしまうことになるだろう。

◆大和行男候補

大和行男候補

 大和行男候補は児童精神科医。「医療も選挙もワンオペ」で活動しているとのこと。選挙期間中も週6で診療を行なっていたという。私は八王子でポスターを見かけたが、ここまで本人が来たということだ。なんでも、大田区池上と八王子市高尾でクリニックを運営しているとこと。

◆小林弘候補

小林弘候補

 小林弘候補は立候補が50番目。ポスター貼りの一部を業者に依頼しており、すでに納品まで済んでいたのだが、ポスターの掲示場所が掲示板枠外となったことで中止となった。

 小林候補はクリアファイルに入れたポスターを枠外に掲示していたのだが、ポスターが剥がれて落ちるという事態が初期にしばしば見られた。

◆木宮光喜候補

 未来党の木宮光喜副代表は、田中角栄元首相の娘との噂で告示前から盛り上がっていた。

 その木宮候補には八王子で会ったのだが、実にツッコミどころの大い街宣であった。
 八王子駅に着くと、既に街宣は始まっていた。未来党の石川新一郎代表が話しているようだ。

木宮光喜候補街宣
遠すぎてよく見えない

 八王子北口ロータリーの向かいから駅に向かって話しているのだが、遠すぎる。街宣の様子は小さくしか見えないし、拡声器の声もよく聞こえない。
当然、ここで聞いている人は誰もいない。

木宮光喜候補街宣
後ろから見るしかない

 仕方がないので、街宣車の後ろに移ったが、候補者の後ろ姿しか見えない。しかも、候補者たちはまったくこっちを振り返ってくれない。彼らはいったい誰に向かって喋っているのだろうか。
 石川代表は、木宮候補のことを「田中角栄の娘という噂もあります。」と紹介したが、当の本人がすぐ横にいるのにそんな言い方はおかしい。木宮候補もとくにその事の是非については答えず、意図的にはぐらかしているように感じた。

木宮光喜候補(中央)
右が石川新一郎・未来党代表

 続いて、木宮光喜候補がスピーチ。公約としている「ゲサラ法」について熱く語った。借金がなくなり、ローンもなくなる夢の法律なのだという。

 あれ、ローンがないということは、家はどうやって買えば良いのだ? 一括払いで家のお金を出せる人なんてまずいないだろう。近くでビラを配っている未来党員にそのことを聞いてみたが、「どうすればいいんでしょうかね。」との答え。おいおい。

木宮光喜候補

 街宣の最後に石川代表が、「八王子へはもう二度と来ません。」と口にした。「多摩格差ゼロ」が様々な波紋を呼んでいる中、それはないだろう。よくよく聞くと、それまでに彼らが消されてしまう可能性があるからなのだそうだ。これは「遺言」とのことだ。いや大丈夫、例え話している内容が事実だったとしても荒唐無稽過ぎて誰も信じてないですから。

 街宣終了。木宮候補はすぐに取材に応じていた。

街宣が終わり取材を受ける木宮光喜候補

 いろいろ聞きたいこともあったので、木宮候補が来ないかとしばらく待っていたが、ずっと記者と話し込んでいた。他にも街宣を聞いている人がいるというのに…。マスコミを通じて多くの人たちに訴えることも大切かもしれないが、木宮候補にはすぐ目の前の有権者を大切にして欲しい。近くに来て挨拶や握手をしてくれれば、投票しようという気にもなるものだが。実にもったいない。
 仕方がないので、その場を後にしたが、しばらくしてまた通りかかると、木宮候補はスタッフたちをそこに残してタクシー乗り場に向かい、そそくさと帰ってしまっていた。まだ19時前で、十分街宣出来る時間だというのに…。本気で当選する気があったのだろうか?

 未来党は今回が初の選挙。そんなわけでまだ選挙のやり方がわかっていないのだろう。悪く言えば素人集団に過ぎない。そう思ったのだが、後で調べてみると石川代表は元公明党で富士見市議を3期務めている。また、NHKから国民を守る党公認で参院徳島・高知選挙区から出馬の経験もある。かなりのベテランのはずなのだが、いったい何をしているのだ。もっとしっかりして欲しい。

◆福本繁幸候補

福本繁幸候補

 福本繁幸候補のポスターは立川駅北口で見つけた。残念ながら街宣は見ることが出来なかったが、政見放送やXの投稿を見る限り、かなり真面目に選挙に取り組んでいるようだる。ただ、やや面白味に欠けるため、イロモノの中に埋没してしまっていた。
 TikTokでは、有権者からの質問に真摯に答えていた。

◆内藤久遠候補

内藤久遠候補
(2020年都知事選)

 3回目の立候補の内藤久遠候補。過去2回は街宣を見たり、ポスターが貼ってあったりしていたのだが、今回は動静がほとんど伝わってこなかった。ただ、街宣自体はしていた模様。

 今回、NHKから国民を守る党のポスタージャックが問題となったが、一部の掲示板では、24番の内藤候補の場所にもNHK党のポスターが貼ってあったという。
 NHK党の立花孝志党首は、内藤候補の許可を得て貼っているというのだが…。

 だとしたら今回の内藤候補がどこまで本気だったのかが怪しくなる。

◆向後真徳候補

向後真徳候補

 向後真徳候補は届け出番号53で枠外にポスター掲示をしていた。彼は自身のnoteで、枠外へのポスターの掲示方法を解説している。

 状況を前向きにとらえ、むしろ楽しんでいるようにも感じる。今回この記事を書くに当たっても、追加情報として「背後が壁か植え込みの場合、風が上を通り抜けて行くので問題なく使えます。背後が崖下の場合、横も下も風の通り道になるので、うまく使えません。」とのメッセージを頂いた。

◆黒川敦彦つばさの党代表・桑原真理子候補

黒川敦彦・つぱさの党

 私が初日の昼間に西多摩地区のポスター掲示板で見ることが出来たのは石丸伸二候補と、意外にも黒川敦彦・つばさの党代表のものだった。
 黒川候補は衆院東京15区補欠選挙での他候補への妨害が公職選挙法違反(選挙の自由妨害罪)の疑いで逮捕、拘留されたため獄中立候補となった。

 6月28日には2度目の再逮捕となり、結局選挙が終了した今に至るまで出てこれていない。しかし、初日にポスターを西多摩にまで貼りに来るとはその組織力は侮れない。
 選挙運動は黒川代表の内縁の妻でもある外山麻貴・朝霞市議らによって行なわれていたが、小池都知事の街宣に黒川代表の街宣車が近づいて緊張が走るという場面があったらしい。

 当初つばさの党は、黒川代表に加えて、やはり逮捕されて拘束中の根本良輔幹事長を立てる予定であった。結局資金難もあって取り止めになったが、もう1人桑原真理子候補もつばさの党関係者だと言われている。
 桑原候補は当初、「プリベントメディカル久米慶被害者の会及び創価学会撲滅党」公認で立候補していたが、選挙制度を利用した名誉毀損であるとの訴えがあったことから、選挙期間中に無所属に変更されている。政見放送も取り止めたため詳細は不明。
 桑原候補の街宣車が、黒川敦彦候補の街宣車と共に行動していたという話もある。

◆野間口翔候補

野間口翔候補

 野間口翔候補は現役の郵便局員。自転車でポスターを貼って回っていたらしい。私は都庁前でポスターを見つけたが、多摩地域には来てくれなかったのだろうか。
 野間口候補もしっかりとした政策を述べていた印象だが、それだけにイロモノや冷やかしで溢れかえった今回限都知事選が許せないに違いない。「供託金1000万円に」という公約は切実なものなのだろう。

◆牛窪信雄候補

 牛窪信雄候補のポスターは見なかったし、貼られていたいう情報も無かった。

牛窪信雄候補選挙公報

 選挙公報では「毎月10万円支給」とベーシックインカムを主張している。しかしよく考えると、都民1400万人に月10万支払うには、年間18.6兆円もの財源が必要になる。まったく現実的ではないではない。

◆竹本秀之候補 

竹本秀之候補

 竹本秀之候補は前回に続いての出馬。「公正な選挙の実現」と不正選挙の撲滅を訴える。選挙公報によると、不正選挙の根拠は、2014年の舛添要一候補の得票がどの区でも2012年猪瀬直樹候補のぴったり48%になっているからなのだと。猪瀬候補4,338,936票、舛添候補2,112,979票。計算すると48.70%。微妙に48%を超えているのが気になるが…。
 とある人が確認してみたところ、実際は区部に限っても45.7%から51.5%とバラバラなのだそうだ。

 ホームページでは「あまり言うと自分の命が危ない」とも語っているが、これなら誰かに消される心配は無さそうである。

◆新藤伸夫・お金をみんなへ シン独立党候補

 新藤伸夫候補は「お金をみんなへ シン独立党」公認。
 「打出党」公認で立候補した2013年参院選京都選挙区の政見放送が伝説になっている。いきなり「私はそのままマイケル・ジャクソンでございます」と語り、自ら作曲したメロディに乗せて国歌を歌い上げた。
 今回も政見放送で歌ってくれた。

◆加藤健一郎候補

加藤健一郎候補

 加藤健一郎候補は2021年千葉県知事選の政見放送で小池百合子都知事にプロポーズしたことで有名になった。今回は小池百合子都知事と直接対決となることから、もう一回プロポーズするのではないかと期待していた。

 ところが加藤候補、実は小池都知事はタイプじゃなかったとは。なんともショック。

◆穂刈仁候補

穂刈仁候補選挙公報

 穂刈仁候補は政見放送を申し込んでおらず、ポスターも掲示していない。選挙公報によると、「多摩地区おまたせ!!」と多摩格差を無くす政策を押し出しているようだ。

◆桑島康文・核融合党候補

桑島康文・核融合党候補

 桑島康文候補は核融合党公認。2022年参院選東京選挙区に「核融合党」公認で立候補も1,913票で最下位落選。23年板橋区議選でも落選している。
 核融合発電所を建設し電力を安価で供給するというのは良いのだが、原水爆を開発することで通常兵力を削減し日米安保を解消というのは冗談にしか聞こえない。それでいて国政政党を目指しているとのこと。

◆古田真候補

 古田真候補は「土頭を働かし最高裁裁判官5人を弾劾する党」公認。前回の都知事選にも立候補を表明していたものの結局立候補を届けなかった。その後、2021年都議選に町田選挙区から立候補。わずか427票で惨敗している
 私はポスターを見ることが出来なかったが、ごくわずかに貼られていたらしい。

◆後藤輝樹・ラブ&ピース党候補

後藤輝樹候補

 毎回政見放送が話題となる後藤輝樹候補。今回はいったいどんな政見放送なのだろうか。ポスターではピンクの長髪のカツラを被った後藤候補が「平和の歌を歌います」とある。ちなみにこのコスプレ、「機動戦士ガンダムSEED」のラスク・クラインではないかと思われる。

 Xで「後藤輝樹史上最高の政見放送になるかと僕は思っています」と語っており、不安しかなかった(笑)

 果たして出来映えは。

 ラップときたか。なるほど、だから「平和の歌」なのか。確かに完成度は高い。最初からこの路線でやれば良かったのに。
 後藤真樹候補のポスターは他にももう一種類貼ってあるのを見た。

後藤輝樹候補
なぜか小さい

 なぜか小さいサイズだった。

◆河合悠祐・前市議市議

 今回の都知事選挙、イロモノ候補がかなりの数揃っていた。そのため、後藤輝樹候補を始め、政見放送はカオス状態。誰が言ったか、後藤輝樹、河合悠祐、AIメイヤー、澤繁実、アキノリ将軍未満、横山緑、内野愛里の7人の候補を称して「神セブン」と。あるいは「七武海」とも。
 その中でもヤバさにおいては河合悠祐・前草加市議の右に出る者はいないだろう。

 河合悠祐候補というと白塗りのピエロメイクで知られる。2021年千葉県知事選挙にそのメイクで立候補して話題となった。もちろん、惨敗したが、その後NHKから国民を守る党公認で参院選や総選挙にも出馬した。2022年10月の草加市議選では決意のためにピエロメイクを封印し、見事に当選を決めるも、当選した途端にすぐに解禁。さすがにピエロメイクでの議会出席は議会によって禁止されてしまったが、現在もピエロメイクでの活動を続けており、“ジョーカー議員”の異名を持つ。

河合悠祐・前草加市議の全裸ポスター
(Xより転載)

 その河合候補の「全裸ポスター」が波紋を呼んだ。もちろん乳首と局部は河合候補の顔写真で見えないようにはなっていたのだが、ポスターを実際に見た人はさぞかしびっくりしただろう。河合候補は警察から迷惑防止条例違反であると警告を受け、ポスターを剥がすことになった。ポスターのモデルを務めた桜井MIUも、この騒動がきっかけで、それまでイメージガールを務めていたカーシャンプー「名もなき」の契約終了に追い込まれる。また、殺害予告が届くなど、大きな騒動となった。
 残念ながら(?)私自身は件のポスターを見ることは出来なかった。(写真はXより)しかし、それ以外のポスターも負けず劣らず問題のあるものばかりであった。

 例えば、「一夫多妻制を導入します。」というポスター。

「一夫多妻制を導入します。」
河合悠祐・前草加市議

 映画「マスク」の扮装をした河合候補を3人の女性が取り囲んでいる。

  少子化対策の抜本解決!
  令和の大奥精度。
  複数の人を愛し、
  複数の家族を持つ社会へ。

もう滅茶苦茶だ。

「憲法9条なんて改正!」

「憲法9条なんて改正!」
河合悠祐・前草加市議

 この主張自体はしごくまともだが…。

  第9条2項
  「交戦権の否認」×
     →
  「高校生の否認」〇
  とかに書き換えときます!

何言ってんだコイツ?
 そもそもこれらの政策は都知事の権限ではない。

 「動物殺処分ゼロ!」

 「動物殺処分ゼロ!」
河合悠祐・前草加市議

 小池都知事が2016年都知事選で掲げた政策「7つのゼロ」のうち唯一達成したとされるものだが…。

   保健所にきた犬・猫ちゃんは
   永田町の敷地内に放し飼いにします。

 それで、誰が餌をやったりするの?

「消費税、廃止!」

「消費税、廃止!」
河合悠祐・前草加市議

 「子供のお小遣いからも税金とるな!」という言葉と共に子供時代の河合候補の写真を使っていて、まともな印象。

 「外国人への生活保護支給反対!」

 「外国人への生活保護支給反対!」
河合悠祐・前草加市議

 こちらも主体自体はまともだが。河合候補がバスの中でアジア系の男性と向かい合う河合候補という構図で何のことやら。

河合悠祐・前草加市議

 こちらのポスターはメイクはともかく、普通の選挙ポスターじゃん。と思ったら、「千葉県全体を夢と魔法の国にする党」?? 千葉県知事選のポスターの使い回しかい。

 河合候補は政見放送もカオスだった。とりわけ民法版がすごかった。

 放送が始まっても画面内に河合候補の姿が見えない。すると、「密です。密です。」という声が聞こえて、緑のスーツ・スカート姿の河合候補が後ろ向きで登場。どうやら小池百合子都知事の物真似らしい。振り替えると、いつもの白塗りジョーカー顔。

小池百合子に扮する河合悠祐・前草加市議
(民放版政見放送より)

 「港区と足立区の名称交換」「109の巣鴨移転」「町田市の神奈川県への移譲」などハチャメチャな公約を次々とぶちまける。さらに、多摩地域に多く見られる「きぬた歯科」の看板を、「投票へ」と書き換えるのだという。これに関してはきぬた歯科が、「当選したらやっていただ。いて構いませんよ」と答えている。

 今回の都知事選立候補で、河合候補は草加市議を失職となったが、ひょっとしたら市民はそれを歓迎しているのではないだろうか。

◆AIメイヤー

AIメイヤー

 AIメイヤーは、政治にAIを導入活用しようという試み。知事なら「mayor(メイヤー)」ではなく「governor(ガバナー)」ではないかという気もするが、もともとは昨年の真鶴町長選挙にも出馬した際に利用し始めた名前である。中の人は、2018年の多摩市長選挙にAI党から出馬した経験もある。
 選挙ポスターにはアンドロイドのイラストを使用。記者会見などでも仮面をつけており、顔出しはしていない。

AIメイヤー政見放送
(NHK政見放送より)

 政見放送では、「2024年東京都知事選挙原稿」と書かれたパネルを使っていて顔を隠していた。この手を使えば、他の候補も顔出しせずに政見放送が出来ただろうにと思う。

◆アキノリ将軍未満

アキノリ将軍未満(ネオ幕府アキノリ党)

 ネオ幕府アキノリ党のアキノリ将軍未満は、「令和維新幕府」を創設し、令和武士による独裁を行なうことを目標とする。「将軍未満」というのは「自ら征夷大将軍を目指す者」のこと。まったくもって意味不明。要するに中二病真っ盛りのようだ。

 ポスターやYouTube動画では兜のようなものを被っているのだが、政見放送では普通の格好だった。

 アキノリ将軍未満も枠外へのポスター掲示組。ところで、いくつかの掲示板では、彼のものではなく、外山恒一氏のポスターを貼っていた。
 外山氏は2007年都知事選で政見放送が話題となった伝説の候補。それ以降もほぼ毎回、都知事選の際には何らかの抗議活動を行なっているが、立候補はしていない。もちろん今回もである。いくらアキノリ将軍未満の許可を得ているからといって、立候補していない人物のポスターを貼ることは許されるのだろうか。

外山恒一氏のポスター
(東京都庁前)

 立川駅北口の掲示板には「YANKEE GO HOME」書いてある謎のポスターを見つけた。おそらく近くの米軍基地に反対するポスターらしいのだが、どこにも候補者名が書いていない。しかしよく見ると、掲示責任者が書いてある。それも、アキノリ将軍未満のものと同じだ。

「YANKEE GO HOME」と書かれた謎のポスター
(立川駅北口)

 同じ掲示板の他の箇所にはアキノリ将軍未満のポスターが貼ってあった。つまり、アキノリ将軍未満は2箇所にポスターを貼っていることになる。

アキノリ将軍未満のポスターが2枚貼られている。
(立川駅北口)

 枠外へポスターを掲示する候補者の場合、掲示板の下、左右、上の順で「いずれか1か所のみ」ポスター掲示することが可能となっている。掲示可能箇所が3つあるのは、掲示板の状況がそれぞれで違うからだろう。それを、「3か所に掲示してよい」と読み間違えたのではないだろうか。

枠外へのポスター掲示の説明書
(向後真徳候補のnoteより)

 ちなみに立川駅南口にもアキノリ将軍未満は謎のポスターを貼っていたが、こちらにはアキノリ将軍未満のポスターは無かった。

「WE  DRINK YOUR PFAS!」と書かれたアキノリ将軍未満のポスター
(立川駅南口)

◆澤繁実候補

澤繁実候補

 澤繁実候補は元自衛官で映画プロデューサー。舞台劇で織田信長を演じたことから、「現役の織田信長」を名乗っている。

 トレードマークはヒゲと和服で、「ほぼ毎日和服を着る会」会長ということもあり、政見放送にも和服を来て出演していた。

◆小野寺紘毅・忠臣蔵義士新党候補

小野寺紘毅・忠臣蔵義士新党候補

 忠臣蔵義士新党の小野寺紘毅候補は、赤穂浪士の小野寺十内の子孫とのことである。忠臣蔵義士の精神を伝えることを公約としている。

 どことなく、故・羽柴誠三秀吉氏を彷彿させる。ポスターは赤穂浪士の鎧兜姿だが、政見放送はなぜか人民服。アキノリ将軍未満もそうだが、その辺もキャラクターを徹底して欲しいものである。

◆NHKから国民を守る党

 今回の東京都知事選挙、立花孝志党首率いる政治団体「NHKから国民を守る党」は19人の候補者を擁立した。定数を超える数の候補者を擁立するということ自体極めて異例の事態である。このようなことは、たとえば2022年総選挙の東京15区に自民党が2人に推薦を出した例など、候補者調整に失敗したような場合を除いてまずない。
 NHK党は前回の都知事選でも複数擁立の戦略を用いている。政治団体「ホリエモン新党」より立花孝志党首、齊藤健一郎候補、服部修候補の3名を擁立している。立花党首以外の2人はポスターに自身の顔写真はおろか名前さえ載せず、宣伝に徹していた。

ホリエモン新党ポスター
(2020年都知事選)

 今回のNHK党の公認候補は、福永活也候補、 犬伏宏明候補、 武内隆候補、遠藤信一候補、上樂宗之候補、二宮大造候補、 中江友哉候補、 舟橋夢人候補、 山田信一候補、 加藤英明候補、 草尾敦候補、津村大作候補、 横山緑(久保田学)候補、 前田太一候補、 南俊輔候補、 福原志瑠美候補、 木村嘉孝候補、 三輪陽一候補、 松尾芳治候補の19名。この内地方議員経験者は遠藤信一・元宇都宮市議と横山緑(久保田学)・元立川市議のみ。立花党首によるとこれは「厳選」した顔ぶれだというのだが、とてもそうは思えない。古参の大物はすでにほとんどがNHK党を離れてしまっている。
 その他、別の政治団体を立ち上げて立候補したのは「カワイイ私の政見放送を見てね」の内野愛里候補、石丸幸人党の石丸幸人候補、ポーカー党の尾関亜弓候補、ゴルフ党の小松賢候補、覇王党の加賀田卓志候補の5人。合計すると24名がNHK党の関連候補ということになる。24名というと供託金だけで7200万円に上る。

 立花党首は、この24人分のポスター掲示板に寄付に応じて「ポスターを貼る権利」を譲渡すると発表した。ポスター掲示板は都内全部で約14000箇所あるが、その掲示板に選挙に出られない人のポスターを貼るというのである。その金額は掲示板1箇所につき5000円。6月以降は1万円、告示後は2万5000円である。ポスター24枚分のスペースには何を掲示しても良い。必ずしも候補者の写真でなくても良いという。これが後に「ポスター掲示板ジャック」として様々な問題を起こすことになる。

東京都庁前のポスター掲示板

 24人の候補者は基本的には自分のポスターは貼っていないが、ごく一部の掲示板では候補者のポスターを貼る例も見られた。東京都庁前の掲示板は唯一、全てのNHK党関連候補のポスターが貼られた掲示板であった。

 もっともほとんどのポスターは、候補名と顔写真以外はまったく同じであったが…。

ほぼ全て同じNHK党のポスター
(東京都庁前)

 唯一、弁護士の福永活也候補のみ違ったデザインであった。

福永活也・NHKから国民を守る党候補

 また、立川駅北口には横山緑(久保田学)候補のポスターだけが貼られていた。横山候補は元立川市議ということで、支持者の多い立川にポスターを貼ったのかもしれない。 

横山緑・元NHKから国民を守る党立川市議

 「ポスター掲示板をぶっ壊す!」と言いながら、しっかりその恩恵を受けている。

 NHK党関連候補でも、独自の政治団体を立てている候補者はポスターのデザインは異なっている。  
 石丸幸人党の石丸幸人候補。

石丸幸人・石丸幸人党候補

 ゴルフ党の小松賢候補。

小松賢・ゴルフ党候補

 ポーカー党の尾関亜弓候補。

尾関亜弓・ポーカー党候補

 覇王党の加賀田卓志候補。

加賀田卓志・覇王党候補

 「カワイイ私の政見放送を見てね」の内野愛里候補については後述する。

◆内野愛里・カワイイ私の政見放送を見てね候補

内野愛里・カワイイ私の政見放送を見てね候補

 NHK党系列では、「カワイイ私の政見放送を見てね」の内野愛里候補が出色であった。都庁前以外でも八王子駅南口でポスターを見かけた。

 この人も政見放送が話題となった。

 なるほど、声はカワイイ。容姿にかんしては・・・好みもあるので何とも言えないが、少なくともこれで「カワイイ私」と言い切ってしまうところにメンタルの強さを感じる。
 それでもって、「カメラの前のあなたそうあなたそんな目で見ないで。可愛いからってだめよ。」などと自意識過剰なことを宣ったあげく、最後は上着を脱いで下着姿になる。

下着姿になる内野愛里候補
(NHK政見放送より)

 いったい誰得なんだ? これでは「カワイイ私」でなく「イタイ私」もしくは「ヤバイ私」に変えた方が良いのではないか…とXでコメントしたら見事にブロックされてしまった(笑)

◆ポスター掲示板ジャック

 NHK党の掲示板ジャックには多くの人がこれまでに警鐘を鳴らし続けてきた。私自身も何度も「栄光なきドン・キホーテ」で話題にしている。それでもほとんど話題にはなっていなかったのだが、選挙が始まってようやく盛り上がってきた。やはり本物を見てのインパクトに勝るものはないということだ。

 多くの苦情が寄せられたというが、当然の話である。ようやくNHK党の異常さに多くの人が気づいてきたということ。

 私が最初に見た掲示板ジャックは立川駅南口のものだった。

「カワイイ私の政見放送を見てね」
(立川駅南口)

 NHK党関連の24枚分のスペースに「カワイイ私の政見放送を見て」のポスターが貼られている。「カワイイ私の政見放送を見て」とは、都知事候補・内野愛里氏の政治団体名である。それを他の候補のスペースに貼るのは問題ではないのだろうか? この中に内野候補はいないなら大丈夫だって? いやいや、内野候補がいるかいないかすら普通はわかりませんって。
 あれ、よく見るとオッサンが2人いる。

「カワイイ私の政見放送を見てね」に混じるおじさんのポスター
(立川駅南口)

 ますます訳がわからない。
 よく見るとQRコードがついている。最近のポスターは、こうやって候補者の公式ホームページに誘導するものもの多い。これを見れば政策が分かるに違いない。
 さっそく見てみた。

 え!? なんじゃこりゃ!?
 オッサンのも。

 これは、ひょっとしたらマッチングアプリなのではないか!? 選挙ポスターからまさかそんなものに誘導されるとは…。まったくとんでもないことだ。
 ちなみにこれらの女性はAIではないかとの疑いもある。そうなると出会うことすら出来ない、ただの詐欺である。

 立花孝志党首はこうした批判に対し、これは「立花孝志のファンクラブだと思って入会してほしい」と訴えている。

 立川駅北口デッキの掲示板ジャックはほのぼの系。動物のイラストが貼られている。

ほのぼの系掲示板ジャック
(立川駅北口デッキ)

 よく見るとポスター掲示責任者の名前もあるから、これでも一応、選挙ポスターだ。

よく見るとポスター掲示責任者の名前も

 八王子駅北口。

八王子駅北口ポスター掲示板

 「こむぎ 保護犬ですが何か!?」と「お米農家です」。

「こむぎ 保護犬ですが何か!?」
(八王子駅北口) 
「お米農家です!」
(八王子駅北口)

 なんの意図があるのか、今ひとつ理解出来ない。

 候補者以外のポスターを貼ったものもあった。
 ルミエール府中近くに「浦西ひかる」のポスターが。

浦西ひかる
(ルミエール府中付近)

 誰だよ? 調べてみるとモデルでYouTuberらしい。確かに、町中にポスターを貼ったところで気づきもしないだろうが。こうして掲示板ジャックに参加すれば気になって調べてしまう。宣伝効果はあるかもしれない。

浦西ひかる
(ルミエール府中付近)

 笹塚駅前には「映画監督プロデューサー安藤光造」と「よしき坊 とら坊」。

「映画監督プロデューサー安藤光造」「よしき坊 とら坊」
(笹塚駅前)

 Wikipediaによると安藤光造氏はそれなりに実績があるプロデューサーのようだが、この掲示板ジャックに参加したことで仕事に味噌をつけたりはしないだろうか。

 それよりも「よしき坊 とら坊」の方が問題。写真を見ると警官の格好をしている。まさか本物の警官のはずはないから、これはコスプレなのだが、本物と勘違いする人がいるかもしれない。なんらかの説明がなくてはなるまい。

「映画監督プロデューサー安藤光造」「よしき坊 とら坊」
(笹塚駅前)

 南多摩中等教育学校(八王子市)前の掲示板には「山口タカオ」と「美波たま」。

「山口タカオ」と「美波たま」
(南多摩中等教育学校前)

 写真でなくイラストなので何かのキャラクターなのだろうか。名前は「高尾山口」と「南多摩」のパロディのようだが…。

「山口タカオ」と「美波たま」
(南多摩中等教育学校前)

 よく見ると「中卒総理プロジェクト」とある。さらに経歴は尋常中学校卒らしい。若く見えるが戦前生まれなのか? わけがわからん。

 調布市役所前には「18〜29歳の若いみんな7月7日(日)は投票に行ってね!!」。

「18〜29歳の若いみんな7月7日(日)は投票に行ってね!!」
(調布市役所前)

 言ってることには全面的に賛成だ。

「18〜29歳の若いみんな7月7日(日)は投票に行ってね!!」
(調布市役所前)

 しかし、「ぬいぐるみ王国駐日大使」って何だ?

ぬいぐるみ王国大使ミーとキー

 ネットを見ると、他にも色々なポスターがあるようだが、少なからぬ問題のあるものも…。
 新宿区のコリアンタウンの入口に「竹島は日本の領土」というポスターを貼った人がいた。

 同じ人は東京韓国学校の前に「すべての拉致被害者を返せ!」のポスターも貼っている。もちろん拉致事件は韓国ではなく北朝鮮の犯行なので韓国学校とは無関係である。

 2020年に自殺した俳優の三浦春馬の写真を利用したポスターには、所属事務所からのクレームが入った。

 これに対しては立花党首が謝罪し、撤去している。

 さらに、複数のポスターを組み合わせて貼る人も出現した。

 これらは、明確な公職選挙法違反である。NHK党は2019年参院選でこの手法を用いようとしたが、選管より違反を指摘されて思い留まったことがあった。立花党首は、ポスターを貼った人が間違えたと主張しているが、それらのポスターも掲示責任者は立花党首となっている。無責任というわけにはいくまい。

 私が分倍河原駅前(府中市)で見た掲示板ジャックも問題があった。

「NHKに受信料を支払う人は馬鹿だと思います」
「大津綾香!お金を返してください!」
(分倍河原駅前)

 立花党首の写真に「NHKに受信料を支払う人は馬鹿だと思います」とあるものと、大津綾香・みんなでつくる党党首の写真に「大津綾香!お金を返してください」とあるもの。

「NHKに受信料を支払う人は馬鹿だと思います」「大津綾香!お金を返してください」
(分倍河原駅前)

 背景には立花党首と大津党首による旧政治家女子48党の代表権争いがある。立花党首は党の代表を大津党首に譲った際に、自身が作った借金を押し付け、それでもって彼女に借金を返せと迫っているのである。

 それ以上に問題なのが、立花党首が大津党首個人への“嫌がらせ”の意図をもってこれをやっていること。なぜ分倍河原にあるのかは分からないが、立花党首はこのポスターを大津党首の生活圏を中心に貼付しているとのことだ。そのことで彼女の生活に支障が出ることを目論んでいるのだという。

 到底、政党の代表とも思えない行為だが、大津党首は民事・刑事双方で争っていくとのことである。

 こうしたNHK党の掲示板ジャックに対してマスコミや世論は否定的な声を挙げ始める。ここまで圧倒的な否定意見が集まるとは立花党首も想定していなかったのではないか。急遽、ポスター掲示板が不要であることを訴えたかったのだと言い訳している。

 いずれにせよ、こうした掲示板ジャックは有権者を愚弄する行為である。いや、民主主義を冒涜していると言っても良い。こんなことは絶対に許されてはいけない。
 こういった掲示板を見て面白がるのは大いに結構だが、間違ってもそんな候補者に投票してはいけない。むしろ非難する声を挙げて欲しい。掲示板ジャックに反対するオンライン署名も盛り上がっていた。

◆2020年東京都知事選挙結果

 前回、2020年の東京都知事選挙の開票結果は次の通り。

当選3,661,371(59.7%)小池百合子 67 無所属・現②
     844,151(13.8%)宇都宮健児 73 無所属・新(立憲民主党、共産党、社民党、新社会党、緑の党推薦)
     657,277(10.7%)山本 太郎 45 れいわ新選組・新
     612,530(10.0%)小野 泰輔 46 無所属・新(日本維新の会、あたらしい党推薦)
     178,784( 2.9%)桜井  誠 48 日本第一党・新
    43,912( 0.7%)立花 孝志 52 ホリエモン新党・新(NHKから国民を守る党推薦)
    22,003( 0.4%)七海ひろこ 35 幸福実現党・新
    21,997( 0.4%)後藤 輝樹 37 トランスヒューマニスト党・新
    20,738( 0.3%)澤  紫臣 44 無所属・新
    11,887( 0.2%)西本  誠 33 スーパークレイジー君・新
    10,935( 0.2%)込山  洋 46 無所属・新(スマイル党推薦)
      8,997( 0.1%)平塚 正幸 38 国民主権党・新
      5,453( 0.1%)服部  修 46 ホリエモン新党・新(NHKから国民を守る党推薦)
      5,114( 0.1%)斉藤健一郎 39 ホリエモン新党・新(NHKから国民を守る党推薦)
      4,760( 0.1%)市川 浩司 58 庶民と動物の会・新
      4,145( 0.1%)内藤 久遠 63 無所属・新
      4,097( 0.1%)関口 安弘 68 無所属・新
      3,997( 0.1%)竹本 秀之 64 無所属・新
      3,356( 0.1%)石井  均 55 無所属・新
      2,955( 0.0%)長澤 育弘 34 無所属・新
      2,708( 0.0%)押越 清悦 61 無所属・新
      1,510( 0.0%)牛尾 和恵 33 無所属・新

 現職の小池百合子都知事が大差で再選を決めている。野党系は宇都宮健児候補と山本太郎候補での票の分散が懸念されたが、両方の票を足しても小池都知事を下回っていた。小野泰輔候補はあと738票足りず供託金没収。残りの18人も供託金没収であった。

◆都知事選開票結果

 7月7日、東京都知事選挙が実施された。投票率は60.62%。前回の55.00%を上回った。
 即日開票の結果、次の通りとなった。

当選2,918,015(42.8%)小池百合子 71 無所属・現③
  1,658,363(24.3%)石丸 伸二 41 無所属・新
  1,283,262(18.8%)蓮舫 56 無所属・新
     267,699( 3.9%)田母神俊雄 75 無所属・新
     154,638( 2.3%)安野 貴博 33 無所属・新
     121,715( 1.8%)内海  聡 49 市民がつくる政治の会・新
     110,196( 1.6%)ひまそらあかね 41 無所属・新
     96,222( 1.4%)石丸 幸人 51 石丸幸人・新
     83,600( 1.2%)桜井  誠 52 日本第一党・新
     38,054( 0.6%)清水 国明 73 清水国明と東京都の安全な未来をつくる会・新
    23,825( 0.3%)ドクター・ 中松 96 無所属・新
      9,685( 0.1%)大和 行男 46 無所属・新
      7,408( 0.1%)小林  弘 49 無所属・新
      5,419( 0.1%)後藤 輝樹 41 ラブ&ピース党・新
      4,874( 0.1%)木宮 光喜 71 未来党・新
      3,245( 0.0%)福本 繁幸 57 無所属・新
      2,761( 0.0%)AIメイヤー 51 AI党・新
      2,339( 0.0%)内藤 久遠 67 無所属・新
      2,174( 0.0%)横山  緑 46 NHKから国民を守る党・新
      2,152( 0.0%)内野 愛里 31 カワイイ私の政見放送を見てね・新
      2,035( 0.0%)河合 悠祐 43 ジョーカー議員と投票率を上げる会・新
      1,951( 0.0%)向後 真徳 62 無所属・新
      1,833( 0.0%)黒川 敦彦 45 つばさの党・新
      1,747( 0.0%)桑原真理子 50 無所属・新
      1,281( 0.0%)福永 活也 43 NHKから国民を守る党・新
      1,240( 0.0%)野間口 翔 36 無所属・新
      1,232( 0.0%)澤  繁実 47 無所属・新
      1,153( 0.0%)牛窪 信雄 51 無所属・新
      894( 0.0%)小松  賢 36 ゴルフ党・新
      882( 0.0%)遠藤 信一 59 NHKから国民を守る党・新
      833( 0.0%)二宮 大造 53 NHKから国民を守る党・新
      812( 0.0%)竹本 秀之 68 無所属・新
      792( 0.0%)アキノリ将軍未満 37 ネオ幕府アキノリ党・党
      759( 0.0%)小野寺紘毅 79 忠臣蔵義士新党・新
      691( 0.0%)山田 信一 53 NHKから国民を守る党・新
      676( 0.0%)木村 嘉孝 49 NHKから国民を守る党・新
      669( 0.0%)新藤 伸夫 75 お金をみんなへ シン独立党・新
      612( 0.0%)中江 友哉 32 NHKから国民を守る党・新
      588( 0.0%)加藤 英明 65 NHKから国民を守る党・新
      578( 0.0%)加賀田卓志 47 覇王党・新
      572( 0.0%)加藤健一郎 74 無所属・新
      560( 0.0%)穂刈  仁 57 無所属・新
      521( 0.0%)前田 太一 38 NHKから国民を守る党・新    
      481( 0.0%)草尾  敦 55 NHKから国民を守る党・新
      466( 0.0%)福原志瑠美 41 NHKから国民を守る党・新
      446( 0.0%)武内  隆 61 NHKから国民を守る党・新
      417( 0.0%)尾関 亜弓 43 ポーカー党・新
      371( 0.0%)犬伏 宏明 48 NHKから国民を守る党・新
      361( 0.0%)桑島 康文 62 核融合党・新
      351( 0.0%)松尾 芳治 46 NHKから国民を守る党・新
      343( 0.0%)古田  真 77 土頭を働かし最高裁裁判官5人を弾劾する党身体から地頭へ人の増える会・新
      329( 0.0%)舟橋 夢人 58 NHKから国民を守る党・新
      306( 0.0%)三輪 陽一 42 NHKから国民を守る党・新
      302( 0.0%)津村 大作 50 NHKから国民を守る党・新
      297( 0.0%)南  俊輔 39 NHKから国民を守る党・新
      211( 0.0%)上樂 宗之 45 NHKから国民を守る党・新

 小池都知事は、20時の投票締め切りと同時に“当確”が出る、いわゆる“ゼロ打ち”の圧勝だった。
 その一方、対抗馬と目されていた蓮舫・前参院議員が、石丸伸二・前安芸高田市長に競り負けた。石丸・前市長のネット上での人気は把握していたが、まさかここまで得票に結びつくとは想定外。NHKの出口調査では10~20代の支持では小池都知事を上回っていたこともあり、今やネット支持が実際の得票にも反映する時代となったといえる。石丸候補のYouTubeを巧みに利用した戦術は、今後の選挙のあり方にも影響しそうだ。
 蓮舫候補の敗因には、共産党が全面的に出てきたことで無党派が逃げたことを指摘する声が多い。東京15区の補欠選挙はそれでも野党系が当選していたことを考えると、その違いはどこにあるのか。しっかり分析する必要がありそうだ。

 田母神俊雄・元航空幕僚長は、2014年は約60万票獲得していたが、今回はその半分以下となり惨敗。供託金も没収となった。私も実際に街宣を聞いているが、衰えは顕著だった。保守票を石丸・前市長に奪われたこともあるのだろう。

 安野貴博候補、内海聡候補は知名度もあり数万票は取るだろうと思っていたが、10万票越えは想像以上の大健闘だった。それぞれ独自な政策が評価された点と、早い段階でポスターを西多摩地区にまで貼り切るだけの組織力がモノをいったのだろう。

 ひまそらあかね候補も私はぜいぜい2~3万票と予想していたが、やはり10万票を超える躍進ぶり。ただ、本人が自信を持つほどの結果とは到底言えないものであった。

 それよりも、石丸幸人候補の10万票弱に驚かされた。そもそもの擁立の理由が、石丸伸二候補との混乱を誘うものだったわけだが、実際に勘違いして投票した人もいたようである。だとしたら作戦成功だろう。

 桜井誠候補は、過去2回は10万票を超えたが、今回は約8万票。田母神候補の立候補で右派票を奪われると予想していたが、田母神候補にそこまでの勢いがなく、なんとかここまでに踏みとどまった。

 清水国明候補が約4万票というのも想像以上の惨敗。知名度を考えれば安野候補、内海候補を上回ってもおかしくないのだが、「防災」というメインの政策が彼でなくてはならないものと思われたのかもしれない。

 ドクター・中松も、初出馬時の27,145票を下回る得票に終わった。御年96のドクターだが、「引退とは言わないが…この状態のままだったら、立候補しても意味がない」と語っている。しかし、「引退と言うと、語弊がある。世の中の状況は刻々と移り変わるものなので、4年後を見た上で考えたい」とも語っている。

 今回、イロモノ系の“神セブン”の中では、後藤輝樹がトップとなった。とはいえ、前回の21,997票の1/4程度。やはり、候補者乱立で票が分散したのだろう。
 AIメイヤー、横山緑候補、内野愛里候補、河合悠祐候補がいずれも2千票を超えたのは、政見放送のインパクトの強さによるのではないか。その一方、澤繁実候補、アキノリ将軍未満が振るわなかったのは、ビジュアルに比べて政見放送のインパクトに欠けたからだと思う。

 獄中立候補の黒川敦彦・つばさの党代表は1800票を獲得した。

 24人が立候補したNHK党関連候補は、石丸幸人候補を除き、いずれも下位に低迷。特にNHK党公認候補は散々たるもので、千票を超えたのは横山緑候補と福永活也候補の2人だけ。この2人にしても、もともとある程度の知名度があったからだ。他の候補者は掲示板ジャックでポスターを貼らなかったこともあり、まったく知名度が上がらなかった。
 これまでの都知事選で最も得票が少なかったのは、得票無効で0票というものを除けば1975年の野々上武敏候補の390票。今回、それを下回る候補が9人もいた。最下位は上樂宗之候補の211票。なお、参院東京選挙区では1995年参院選にフリーワークユニオン公認の岡島一成候補の251票という記録があるが、上樂候補はそれをも下回っている。今後もこの記録を抜くのは困難だろう。
 NHK党公認候補19名の得票の合計は11,181票。得票率はわずか0.17%である。その他のNHK党関連候補者を含めても24名で112,081票、得票率1.64%となっている。2022年参院選でNHK党公認候補5名の総得票が105,558票で、1.67%だったことを考えると、ほとんど変わっていない。候補者を多く立てたからといって得票が増えるというわけではない。

◆選挙無効裁判

 選挙後に選挙無効の裁判を起こす動きもある。掲示板の枠内にポスターを貼れなかった候補者がいたことから、そうなるだろうとの予想はあった。
 アキノリ将軍未満は、掲示板枠内にポスターを掲示できなかったことで、東京都に対して損害賠償請求および必要な行政措置の義務付けを求める訴訟を提こした。損害賠償額は象徴的に1円とすることで、日本社会全体に広く問題提起する意図を示しているという。
 同じく小林弘候補も東京都や都選挙管理委員会委員長、小池百合子都知事を相手取り、1000万円の損害賠償を求める訴えを起こしている。

 小林候補は、NHK党の立花党首と共に会見に臨んでいたが、どう考えても掲示板が足りなくなったのはNHK党のせいである。隣にいる男こそ訴える対象ではないのか。
 立花党首は、NHK党の候補者は掲示板の枠内に収まる人数しか立候補していないため、枠からはみ出したのはあとから立候補した候補者の責任だと語っている。

◆総選挙へ

 都知事選の結果は、年内にも予想される総選挙にも影響があると考えられる。衆院補欠選挙で全勝するなど、立憲民主党はこのところ昇り調子だったが、蓮舫候補の惨敗で水を差された。都知事選と同時に実施された都議補選でも立憲民主党は1議席しか取れなかった。だからといって自民党に追い風が吹いているという訳ではない。都議補選で自民党候補は8人中、2人しか当選出来なかった。
 石丸伸二候補は確かに善戦した。次は国政という声もあるが、「石丸新党」誕生については何とも言えない。これまで都知事選で健闘しても、国政に失敗した例はいくつもある。10年前の田母神俊雄候補しかり、4年前の桜井誠候補しかり。都知事選と国政選挙では状況も違う。それに、有権者というものは飽きやすい。有権者が既存の政党に代わる新たな第三極を求めていることは明らかだが、果たして石丸ブームはいつまで続くか。先にも述べたように早くも「石丸構文」で揶揄されつつある。これまでも、みんなの党、日本維新の会、都民ファーストの会、最近ではNHK党、参政党と、目まぐるしくブームが生まれては消えている。
 石丸伸二候補は次の一手が肝心だ。石丸候補本人は4年後は自身が「大本命」だと語る。しかしその一方で、今回の選挙の際に不手際のあったマスコミの「排除」も宣言している。

 まったく何様のつもりだろう。こんな調子では自身の勢いが4年後にも持続しているとは到底思えない。おまけにマスコミを敵に回せば泡沫候補と課すだけである。

 いずれにせよ、引き続き政界の動きを刮目して待とう。

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