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手錠    #ショートショート

ある日の事、業務を終えた私は、この日の営業活動を日誌にまとめていた。すると上司が目の前に現れ、最近の営業成績の悪さをウジウジと叱責してきた。
最近まで、私を息子のように可愛がってくれていた上司が、ナゼ?

常にトップ争いをしていた昨年に比べ、最近の成績は確かに自慢できるレベルではない。かといって、ほかの連中に比べてもそん色は無いハズだ。
そう言えば、朝から機嫌が悪かった。また夫婦喧嘩をして来たに違いない。家庭のトラブルを仕事に持ち込むなんて、とんでもない話だが、ストレスを吐き出せば収まるだろうと暫くおとなしく聞いていた。
しかし、どうも今日は収まる気配がない。収まるどころか、事もあろうに私の家庭の事まで持ち出して来た。自分の家庭の問題は棚に置いたままだ。
こぶしを強く握り、罵声に耐えていたのだが、私の妻の名前を口にした時、何かが「プツン!」と切れる音がした。

近くにあった電気コードを掴み、上司の首に巻き付け締め上げた。
「ひゅっ」
空気が漏れる音と伴に、彼の身体から力が抜けて行く。スローモーションのように上司の体が崩れ落ちるや否や、事務所のドアが開いた。連絡もしていないのに、警官がドヤドヤと部屋に入って来るではないか。あっという間に手錠を掛けられた私は、自由を奪われた。

すると突然、背中越しに、
「これで遂に、君を首に出来る。」
横たわっていたはずの上司が起き上がり、ニヤッと笑った。
「しまった、はめられた。こんなはずはない、これは夢に違いない。」
と手錠を振りほどこうとして目が覚めた。
手には、スマホの充電ケーブルが巻き付いていた。
 
※アダルト部門ご希望の際は、最終行を下記に置き換えてね!
昨夜のプレイで、妻から手錠を掛けられたままで。 

【どちらも664文字】
第3期てのひら小説講座宿題(テイクアウト講座)で発表した作品です。
お題は、【プチどんでん返し】or【夢】でしたが、両方を入れてみました。
 



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