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アヤソフィア博物館がイスラームの祈りの場に

トルコのエルドアン大統領は、イスタンブルの歴史地区にあるアヤソフィア博物館を、イスラームの祈りの場として7月24日の金曜礼拝から開放した。

アヤソフィアは、537年に時の皇帝ユスティニアヌスの命を受け、キリスト教会として建立されたもの。1453年にイスタンブルがオスマン帝国の首都となると、イスラーム寺院として利用され、キリスト教のモザイクなどが漆喰で塗り固められた。

トルコ共和国成立後には、漆喰が剥がされて修復され、1935年にはキリスト教とイスラームの要素を併せ持つ博物館として公開されてきた。隣接するトプカプ宮殿、地下宮殿とともに、旧市街の観光のまさに目玉、370万人以上の観光客を集めていた。

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外観は要塞のようでもありそっけないが、直径31mの大ドーム、金に輝くモザイク画・・・。アヤソフィアは当時の最高技術を駆使したビザンツ建築の最高傑作といわれている。四隅にあるミナーレ(光塔)は、イスラームの礼拝を呼びかけるための塔だから、後で付け加えられたものだ。時のスルタンが、1本ずつてんでバラバラに造ったために、ミナーレのデザインがぜんぶ違う。

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2階の回廊から見ると、アヤソフィアの特殊性がよくわかる。正面奥の半円のくぼみにあるのが、メッカの方向を表すミフラープ(壁龕)。真上の天井には聖母子の肖像。右側の丸い大円盤はアッラーを、左の円盤はムハンマドを意味する。オスマン朝時代に付け足されたイスラーム的な装飾と、聖母子像が同居するというのがアヤソフィアの魅力だ。

共和国になって政教分離、世俗主義となって欧米に追いつけ追い越せ、近代化に邁進するトルコの姿をこの博物館に投影する人も多かった。

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エルドアン大統領は、欧米キリスト教国の反発も何するもの、「世界遺産の現状変更すんなよ」というユネスコの協議要請もはね退け、アヤソフィアをイスラーム寺院とした。初日は大統領も最前列で礼拝、門前の広場は入れなかった人で埋め尽くされていた。

祈りのとき、聖母子像は布で覆うのだという。この時間帯、観光客は入場できないが、それ以外の時間は自由に(大行列に並ぶ必要はある)入ることができるから、今までどおり「ふたつの聖なる空間」が楽しめるはず。博物館じゃないから入場料が不要になったというのが、ぷち朗報かも。

アヤソフィアには、親指を入れて、ぐるりと回せれば願いがかなう、という柱がある。柱の穴に、アヤソフィアが今後どう変わっていくのか、聞いてみたい。

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