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空飛ぶ汽車とサラの夢 第6話

《第4話こちら》
《第5話こちら》

それからというもの、二人の朝の森の散歩は、サラのでたらめな鼻歌のあとには、 ” かごめかごめ ” を
歌うのが日課になりました。

「ほんとに来るのかな?」「どんな風に来るのかな?」二人であれこれ想像するのもまた日課になって、1ヶ月が経った頃のある朝。

「お兄ちゃん......!! 」

先にスキップしながら木々の間をすり抜けていたサラが、ピタッと動きを止めて、ケイの方を振り返りました。ケイは急いでサラのところまで走っていきます。ケイもまた、あまりのことに驚いて、サラの顔を見返すばかり。

この間作った秘密基地のトビラが、まるで職人さんが作ったみたいに、木の穴にピタッとはまる、きれいな木製のトビラに変わっています。

サラの作った目印が、そのトビラの木製の取っ手からぶら下がっていま
した。

「このトビラ、誰かが作り直したのかな?」
「まさか、そんなことをわざわざしても、なんにもならないじゃないか」
二人は、恐る恐る、トビラの取っ手に手をかけて、ゆっくり押し開きました。

するとどうでしょう。

外から見たらただの大きな木の洞だったものが、一歩足を踏み入れると、ベンチまで備わった小さな駅舎になっています。
その奥には、なんと線路と、機関車があるではありませんか。

二人はあまりのことに声も出ず、もう一度、目をまん丸にして顔を見合わせました。

「夢ではなさそう、かな 」
「サラ、こんな変な夢みたことないよ 」

やっとの事で声を出し、立ち尽くしている二人に、若い男の人が声をかけました。茶色のダボタボなズボンに、緑色のタンクトップ。頭にはスナフキンのような帽子をかぶっています。
「やぁ、君たちかい。僕らを呼んだのは 」
陽気な声だけど、それはテレビのキャラクターのような感じではありません。もっと、心の真ん中に届くような力強さがありました。
そして、まっすぐな瞳で二人を見ています。

「えっと......」

戸惑うケイを見ると、若者は言いました。
「そうか、まずは自己紹介をしなくちゃな。僕はソウ。空飛ぶ汽車に乗って、世界中を旅してる。旅の目的は......君のような仲間を探すこと、かな 」
ソウはもう一度、ケイのことを優しく見つめました。

「僕は、ケイ。空飛ぶ汽車の伝説は、本当だったんですね。」

「伝説ってほどでもないだろうけどな。まぁ、確かに。ご覧の通りさ。たぶん僕は君の話を理解できると思うから遠慮せず話して欲しいんだけど、君の望みはなんだい?」

ケイは、ゴクリと唾を飲み込んでから、じっとソウのことをみて、話し始めました。
「僕は......僕は、今とは違う空を見たい。村のみんなは誰一人信じてくれないけど、空には光る玉があるって、......僕は、きっとあるって信じてるんです。探してみたいと思っているんです。それで、汽車を呼ぶおまじないをしていたんです。」

ソウは、ケイをまっすぐ見つめて言いました。
「そうか、君の国は ” 晴れ ” を知らないんだね。誰にも信じてもらえなくて、辛かっただろう。君はもうすぐ真実を見る。安心していい。そして、僕たちここにいる仲間はみんな、これからずっと君の味方だよ 」

「サラだけは......ここにいるサラだけは、信じてくれたから 」

次回へつづく


原作・ 絵 Ayane Iijima 
原案 Mariko Okano


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