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鏡の世界。

 手紙は私の一部だ。私は宛先のない手紙を毎日したため続けている。それを日記だと言ってくる人もいるけれども、純然たる手紙。これだけは確かなの。だって、この手紙はれっきとした宛先がある。

 「宛先」と聞いて、住所とか郵便番号とか、そういった即物的なことを思ったならば、残念だけど私と話をする資格がないわ。私はもっと素敵な人がいい。…それじゃあ一体全体どこへ出しているのか、とあなたは食い下がるでしょう。いいわ、特別に教えてあげる。私は、鏡の世界に手紙を送っているの。

 人間っていうのはほとんどの場合醜くって仕方無い動物であるけれど、たまにロマンティックな時もある。例えば、果てしない宇宙に向かって、通信を送ったりするのよ?それってすごく素敵じゃないかしら。可能性にパタンと蓋を閉める、そんな人には到底思いつきもしないわ。

 だから私は、毎日手紙にキザなことやちょっと恥ずかしいことまで書き留めて、紙飛行機にするの。そして、二階から池に向かってスーッと飛ばしているの。紙飛行機が鏡の世界に入っていく瞬間の、あの揺らぎがとっても素敵なのよ。

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