屋上は7階。

私は毎晩、マンションの屋上で煙草を吸うの。時間はまちまちだけど、煙草を吸いたいと思った屋上へ行く。一日に一本。それを世界で一番時間をかけて吸うのが、私の至福。

タワーマンションではないから、例えば東京から富士山が見えるみたいな常套句は使えないけれど、7階からでも世界はずっとクリアに見ることができる。もしかしたら、人間の視力をもって、もっとも遠くを高い解像度で望むことができるのは7階なのかもしれない。遠望をしながら、地上よりもずっと空に近い場所から煙を吐く。そういうのって、幸せな時間だ。

ただ、私の至福なんか、地上を歩く人は誰も目にとめない。上から観察すると、人がどれほど下ばかり見て歩いているかを痛感する。だから私は、いつもサプライズを用意する。ブラウスをずらし、ランジェリーを地上へ見せつける。今のところ、誰も私のご褒美を受け取っていない。たまには上を見ることって、大事なのよね。

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