違和。

何かがおかしい、とふと思った。当たり前の日常のどこかが、奇妙な様相を呈している。その違和に気づいた瞬間、僕の頭はそれで一杯になった。何かがおかしい。僕は思い返した。本を読んで、珈琲を飲んで、映画を観て、散歩をして、ランチをして、少しばかりの作業をして、お店に入ってお酒を飲んで……この牧歌的な一日のどこかに何か胡乱なものが潜んでいる。どこだ? それは、どこにある?

やがて、僕はそれに思い当たる。僕はいつ起きた。昨夜、いつ眠りについたのだ? 考えても考えても、それは見当たらない。その前日はどうだ? その前の前の日は? 見当たらない。勘弁してくれ、いったい僕はいつから眠っていないんだ。

家へ帰ると僕は家にあるだけの酒を飲み、ベッドに入り目を閉じた。しかし、いつまで経っても眠りは訪れなかった。何かがおかしい。そうだ、あれだけ瓶を開けたのにまったくの素面だ。僕は眠ってしまいたい気分だった。しかし、眠りは僕から失われてしまったので、ただ茫然としていた。そして、朝が来た。もちろん、奇妙な出来事はこれで終わるはずがない。

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