注射針。

「筋肉注射って聞いてたからどんなに恐ろしいものかと思っていたけど……たいしたことなかったネ」

「いやぁ、僕は不安でいっぱいだよ。元来、僕は注射という営みに辟易しているんだ。注射針が自分の皮膚を貫くことを思うだけで、気分が悪くなってしまうくらいにネ」

「そんな君でも辞められなくなるとは、やっぱりオクスリは恐ろしいものだネ」

留置所での会話は、思いの外盛り上がった。

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