生霊の仕業。
二日酔いでもないのに、その日は気怠さに包まれていた。夕方を過ぎても、その厭な感じは拭うことができなかった。もしやと思い僕は窓を開けて、爪先に火を灯した。その灯火を項に近づけると、生霊が姿をあらわした。
「もういい加減にしてくれよ」
彼女に憑かれるのはこれで六度目だ。
「しょうがないじゃない。あなたが誘惑してきたんだから」
生霊の声は脳内に直接響くから、会話には少々骨が折れる。
「何度も言ってるけど、君がそう解釈しただけだろう。僕に欲情するのは勝手だけど、取り憑かれると色々面倒なんだ」
「しょうがないじゃない、気づいたら生霊になっているんだから」
僕は溜息をついた。いつもこの一点張りだ。
「だいたい、生霊になっている間、君の本体はどうしているんだ」
「知らないわ。眠っているんじゃないかしら……」
しかし、人が生霊となるのに、その程度の代償で済むはずがなかった。僕は後に、不都合な形でそれを知ることとなる。突然、生霊が燃え始めたのだ。彼女の本体の葬儀が、始まってしまったのだ
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