一年時計。

1年に1度だけ、キスをする。彼女と僕は、一年時計を共有しているから。僕と彼女が、別れると時計は回転を始める。ゆっくりと、ゆっくりと。どれだけもどかしく思っても、時計の針は一定の速度でゆっくりと時を刻む。1日にして2分。それが30日繰り返されて、ようやく1時間。しかし僕達は、時に忘れたとしても、お互いを思いあって時間を待つ。雨降りの宵も、木枯らしの黄昏も。  

そうすれば、シンデレラの時間はやってくる。魔法の時間。僕はガラスの靴をポケットに携えて、彼女に会いにいく。必ず雪が降る。牡丹雪がマフラーの上に落ちる。それを拭って、キスをする。

一年時計。また、もう一年。その間、僕は彼女の温もりを抱きしめて、生きていく。どれだけ生き急いでも、一年時計の針は一定の速度で進む。その針が示すたった1秒が、どれだけ愛おしいことか。一年時計を残りどれだけ回すことができるかは分からないけれど、僕はこの時間が大好きだ。


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