傘。

せっかく休みを取ったのに、外はレースカーテンを閉ざすように雨が降っている。僕は雨が嫌いだ。いや、正確に言えば雨降りの時に携えるものが嫌いだ。傘。僕はこいつのことが地球の裏側で起こっている戦争よりも嫌いだ。

まったく、今日は瓶ビールを片手にピクニックをする手筈を整えていたのに。キャンパスの芝生の上に寝そべり、光合成をしながら月が溶けてしまうくらい素敵なデートプランを考える予定だったのに。雨のせいで全てが台無しだ。傘をさすと緑色の瓶を持つ手が塞がれてしまうし、荷物を置く時にも嵩張る。傘のせいで全てが台無しだ。

傘をさすくらいなら、家にいた方がましだ。しかし、傘のせいで外出が出来ないというのもどこか癪に障る。いったい僕はどうすればいいんだ。諦めて傘を受け入れるか、自分を貫き通すか。

多くの人がそうであるように、結局僕はまた傘を受け入れてしまった。この程度のことでも、人が信念を貫くことは難しい。それだから、僕は傘が嫌いなのだ。僕が信念を曲げてしまう人間の側にいることを、再認識させられるのは少々堪えて溜め息が出る。

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