純粋だから。

世界の全てを憎んでいるような目をした女が、私を睨んでいる。

「そうか、やっと分かった」

エウレカ! 

「君はあまりにも純粋だから、世界を憎んでしまったんだ! 」

世界は音を立てて崩れていく。氷に火を灯したみたいに。彼女の唇の先で燃ゆる灰が、雪のように落ちる。

「ねぇ、君はその灰が、雪であると信じて疑わないんだろう? 雨が、誰かの流した涙であると悲しんで君もまた涙を流すんだろう? だから、君は世界を恨んでしまった」

彼女は立ち上がり、僕を襲う。

「嗚呼、僕が君の痛みを取って代わることができたなら! 甘んじて受け入れよう。君は強いから弱く、怖いから強がっている……」

気付きば、僕は道端でアスファルトに添い寝をしていた。風は冷たく、空は暗かった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?