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マタニティ。

 「あぁ。」

 彼の隣を歩いていたら、唐突に声を出された。こんなことが幾度かあったから、彼はトゥレットなのかも知れない。気心が知れた仲であったので、聞いてみることにした。

 「…ちなみに、そういうのってよくあるの?」

 「そうだねぇ、やっぱり殺してしまうのは心苦しいよね。」

 「…それはどういう意味かい?」

 「あ…そうか。ちゃんと説明した方がいいよね。実は、昨日ガールフレンドとセックスをしたんだけどね、僕は貧乏な学生であるからもちろん避妊をしたんだよ。僕は臆病だから、うんと厚いやつをだよ。だから、もちろんそういう可能性はゼロに近いんだけど、それって殺人と同義な気がしてならないんだよ。生物の摂理に従った行動に、蓋をしているからね。生まれるべきだった受精卵を阻害しているんだから、なんだかより悪質な気がしてならないんだよ。だから、ふとバーチャルな僕の子供声が聞こえてしまう瞬間があるんだ。それって結構辛いもんだよ。」

 僕は彼のこういうところが嫌いじゃない。

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