驟雨。

巨人の群れが一斉に泣き出したみたいな驟雨だった。僕は慌てて高架下に駆け込んだ。さっきまでは、傘を持つのが馬鹿らしくなるくらいの晴天だった。メリー・ポピンズでもない限り、傘を持とうなんて考えすら浮かばなかっただろう。いや、敬虔なヤクルト・ファンも持つかも知れない。少なくとも僕は、そのどちらでもない。

近くに屋根なるものがなかったら、僕は水浸しになっていた。少年の頃なら、進んで濡れにいっていただろうけど。僕は友達と降りしきる雨の中、雨乞いのような行為をしたことを思い出した。何故だろう? しかし、その瞬間何よりも雨に濡れることが楽しかったのだ。今はそうもいかない。『ショーシャンクの空に』が好きな女の子が隣にいたら、もちろん全力でやるけれども。

高架下には、先客の野良猫がいた。初めは僕を警戒していたが、敵意がないことを認めて昼寝を始めた。僕はジェリーになって、トムの髭を引っ張ってやろうかと思った。しかし、我々は高架下を共有する者である。僕は猫にゆっくりと近づき、頭を撫でてやった。猫は目を覚ましたが、逃げなかった。猫にはそういう大らかなところがある。僕も見習わないといけない。

それにしても、激しい雨音というのは、こういう四方山な思考を随分助けてくれる。僕はそういった類いの思考を、割に必要としているタイプの人間であるから、巨人達には感謝しないといけない。僕は高架下から、上空を覗いた。そしたら本当に巨人が慟哭していて、僕は不覚にも笑ってしまった。

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