怪獣。

深夜の帰り道10キロ。誰しもが眠りに就いていて、行き交う人は一人もいない。僕だけが千鳥足で闊歩。道を独占しているような気分になる。そういう時、うっかり怪獣になってしまうことがある。

酩酊していると、思考を脳内に留めておくことが難しいのだ。脳内を巡る言葉が口から漏れ出す。道には僕しかいない。深夜の静寂に僕の声が響く。その快感は、怪物を馨しく誘う。大きな声で、叫んでみる。声は山彦のように夜に伝播する。もう一度、叫んでみる。そして、怪獣は完成する。怪獣は咆吼し、夜を駆ける。もう誰にも止められない。周りに人がいたとしても、それを認識するだけの能力が怪獣にはない。

奇声に似た声が夜に響いたら、あなたは怪獣に気をつけた方がいい。しかし、もっとも気をつけなければならないのは、あなたの中にも怪獣が潜んでいるということだ。

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