かりそめ。

私って、不純ね。筆洗いバケツの水みたい。綺麗な緑、美しい紅、嫋やかな青。全部をぐちゃぐちゃに混ぜた後の水みたい。一人一人の私は、とても純粋無垢なの。でも、ぐつぐつと混ぜられちゃうと、ブラックホールみたいに深い黒になる。

私は貴方を一番に愛していると信じて疑わなかった。好きで好きで、四六時中貴方のことを考えている気がしたの。でも、それは違かった。私は独りの時にしか、貴方を考えていないことに気付いたの。それって、とても哀しいことだ。私が求めているのは誰かであって、たまたま思い当たっていたのが貴方であったということだから。

それに、貴方は一度も私の夢で躍らなかった。不思議と、夢に出てくる登場人物は限られている。貴方はそこに風穴を開けられなかった。私がこれまで抱いてきた貴方への思いは、かりそめのものだったようだ。

お詫びに、一度くらい抱かせてあげようかしら。私が貴方に好意を抱いていたことは確かであるし、貴方と私の相性が良いことは大きな耳たぶをみれば自明だもの。でも、貴方って不純な女が苦手そうだから、このまま消えてしまった方がいいかしら。

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