ラブドールは喋らない。

ラブドールが家庭に定着してから、しばらくが経つ。それはスマートフォンのように、世界を一変させてしまった。今や、一人に一体は当たり前で、「二人持ち」すら物珍しくない。
 
これまで、一部の男性に愛好されたに過ぎなかったラブドールが、なぜ全人類的に流行することとなったのか。始まりは、クローン法改正の副産物としてだった。

抗体開発や被検対象としてクローンの活用が全世界的に認められた際、目敏い日本人が動き出した。それは、まるでカルピスを調合するかのように、クローンを設計することができる悪魔的技術だった。アプリ上で、理想のラブドールをカスタマイズして、発想される。人々の価値観は現金なもので、瞬く間にそれは世界を変えてしまった。

ラブドールは話すことができない。一部の思想家はその道徳性に強く反駁したが、ラブドールは全ての刺激が快感として認識されるように設計されている。一体何が問題なのだろう? 人々はそう言って、日夜性生活を営んでいる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?