鷹になる夢。

僕は空の飛び方を知っていた。それはあまりにも自然なことだったから、特別なことだと気づくのに時間がかかった。僕がそれを認識したのは、自分を俯瞰で捉えたからであった。つまり、僕の視線に人間としての僕がいたということ、僕は夢を見ているのだと分かった。自分から離れて、空を飛ぶ何かになっているのだ。鷹になったと仮定した。鷹のイメージが真っ先に降りてきたということは、その瞬間から僕は鷹であるのだろう。

せっかく鷹になれたのだから、僕は思いっきり飛んでやろうと思った。夢というのはどうも気まぐれで、儚くして天井を見上げていることがしばしばだ。僕は、高く空をめざした。空とは人間の叡知を越えて、遥か高くまで広がっている。

しばらく上へと飛翔して疲れたから、どれくらい僕から離れたかを見据えてみた。すると、豆粒のように小さくなった僕が見える。しかし、どうも奇妙なことに何粒もそれが縦に連なっているように見える。すると、粒は増殖を始めた。瞬く間に粒は増え、気づけば無数だった。

鷹の視点で自分を俯瞰するとは、恐ろしいことだ。汗ばみの下着が、魘される僕が、それを物語っていた。

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