河童の川流し。

河童はよく蛙に化ける。しかし、見分けることはさして難しくない。蛙ならざる動きは、自然から一線を画した我々でも容易く気づけるほど目立つものだ。そいつを踏んでやれば、河童は驚いて姿をあらわす。あまり強く踏みすぎると、皿が割れてしまうから注意が必要だ。

今日も、河童を探しに川瀬に訪れる。いた。図に乗った河童は、牛蛙に化けている。僕は、踏まれることを希求しているかのような牛蛙を踏んだ。しかし、大きな牛蛙だったからか、うっかり強く踏んでしまった。河童の皿は完全に砕けてしまい、河童の屍体が僕の靴底に拡がった。

しばらく踏みしめていたが、祟りも何も起こらなかった。僕は、河童の割れた皿の端を持ち上げ、そのまま川に投げ込んだ。河童は死んだまま、せせらぎと共に流れていった。それ以来、僕は河童に出会っていない。

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