百日紅。

貴方を目の前にすると、私は盲目になってしまいます。想いを伝えるなど滅相もない。私は、貴方の顔ですら朧げなのです。

だから、私があのようなことをしてしまったのでしょう。私は、貴方が吸った煙草を一本、紙に包んでしまいました。私にはそうすることしか出来なかったのです。私は、庭にそれを埋めました。ピンクの花が盛りの、百日紅の根元に。人肌にどこか似ている百日紅の幹に、貴方を重ねていました。

しかし、百日紅は枯れてしまいました。病気に罹ってしまったのです。百日紅の花を縁側から愛でながら、お茶を点てることが私の楽しみでした。私には、あの行為が病気を呼び込んだとしか思えませんでした。

貴方からの便りも、まるで百日紅と共に死んでしまったかのように届かなくなりました。私は、貴方をも殺してしまったのでしょうか。枯れた百日紅の根元には、まだ貴方の煙草が眠っています。

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