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水注ぎの例。

「ねぇ、君はいったいどうして…そのような感じなんだい?」

「ん?」

「だから…どうしてそう湯水の如くアイデアが湧き出てくるんだろう?僕は、君の才覚を妬んでいるんだよ。」

「さぁ、どうしてだと思う?」

「あんまりはぐらかさないでくれ。僕はこう見えて凄くプライドが高い人間なんだ。そして、自分の実力が申し分ないことも自覚している。しかし、君に圧倒的な力の差を見せさせられすぎて、どうにかなってしまいそうなんだ。僕は努力を惜しんでいない自信もある。君と僕のどこで、このような差がつくんだろう?」

「…才能を言い訳にしないことは認めよう。でも、君は努力を惜しんでいないといった。そこに、君の奢りがある。例えば…このコップに水を注ぐとする。君は、恐らく表面張力の限りまでしか水を注ぐだろう。しかし、その先は?それが、君と僕の違いだよ。」


夕暮れ、彼はテーブルの上のコップに水を注いでいた。躊躇せずに注ぎ、水はコップから溢れ流れた。溢れ出した水は、テーブルを穢した様にしか見えなかった。あるいは、これが粛然たる違いなのかも知れない。

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