子泣き爺。

子泣き爺に取り憑かれてしまった。寝付けない夜に、いつも奴はやってくる。ズシン、ズシン。ベッドの底が抜けてしまうのではないかと思うくらい、体はみるみる重くなる。僕はそのまま朝を迎える。

僕は知り合いという知り合いに相談をした。子泣き爺が取り付いたことはあるかと、聞き回った。しかし、誰も彼も子泣き爺なんて空想上の妖怪に過ぎないと諭した。酒が進むと、僕は自分が如何に悲劇の主人公であるかを理解してもらおうと躍起になった。

「いつも、こうなんだ。僕だけが、こうなんだ」  

誘ってばかりの僕に、知り合いという知り合いから連絡が来るようになった。

「君から子泣き爺の話を聞いた時から……僕も取り憑かれてしまったんだよ」

僕自身が子泣き爺であることに気づいた時、僕は泣くことしか出来なかった。ズシン、ズシン。僕の知り合いは、みんな布団に変えたそうだ。

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