古時計。

僕は律儀な定間隔で針を刻み続けている。止め方は分からない。僕に分かるのは時間の間隔と、針の刻み幅だけだ。けれども、あまりにも人間の言葉を聴かさせられたから、言葉を憶えてしまった。言葉を憶えたせいで、時々調子が狂うようになった。考え事をして間隔がずれてしまったり、むしゃくしゃして刻み幅を広くしてしまったり。もう、本当の時間はもう分からない。僕に分かるのは間隔と、刻み幅だけだ。

僕がいる場所は、病院と言うらしい。僕が育った場所で見た人間はおとなしそうであったが、この病院で人間というものに懲り懲りした。弱っている人に、追い打ちをかけるようにメスを入れる残酷な種族であると知ったからだ。時間を刻む僕にもそのメスが向けられるような気がして、怖かった。もう随分とこの部屋に人間が来ていないのは、僕にとっては好都合なのかも知れない。

しかし、人間は時間の目安を知るために、僕達時計を求めている。人間のいない部屋で時間を刻むというのは、随分皮肉なことだ。いや、あの残酷な種族だからこそ、このような仕打ちを思いつくのかも知れない。

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