裸足。

初めはちょっとした好奇心だった。久々にサンダルを履いて歩いた時、普段より大地を踏みしめている感覚が強く心地よかった。足の裏はたくさんの刺激に溢れ、ありありとした地面の感触が脳へと突き抜けるように送られる。思えば、幼き頃は裸足で公園を駆け巡ることがあった。熱い砂浜を、その指で掴んだことがあった。薄いサンダルで歩くと、そのような日々の鮮やかさであったり、美しさであったりが思い出されて楽しかった。

そして僕は、ちょっとした好奇心が浮かんだ。久々に裸足で歩いてみよう、と。例えばスーツを着ていたりしたら、それは数え切れない夢想のうちの一つに過ぎなかっただろう。しかし、その日僕は真っ白なTシャツを着て、よく冷えたペリエを片手に近所を放蕩としていた。周りにも人が居なくて、僕を妨げるものは何一つとしてなかった。僕はすぐさま、マジックテープを剥がし、生まれたままの足を世界に接続した。筆舌に尽くしがたい快感が僕を穿ったことは言うまでもない。

あれ以来、僕は裸足で歩くことで頭が一杯になってしまった。僕も一応は社会的生物だから、四六時中裸足でいる訳にはいかない。だから僕は、夜中にひっそりと裸足で行脚している。もしあなたがそのような私とすれ違っても、どうかそっとしておいてほしい。それは害のない、ひとつの有様でしかないのだ。

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