競走中止。
「今日はもう駄目だ」
僕は思わず、競走中止のスイッチを押す。
-本当に中止でよろしいですか?
-Yes
世界は暗転し、僕は意識を失う。
光が瞼を突き破るので、開く。
「今回も早かったですね」
ワールドインタイプの人生ゲーム。意識まで完全没入することができるため、必ずディーラーが待機している。
「仕方があるまい。私が目指しているのは、非の打ち所がない完璧なゲームクリアなんだ」
「しかし、あなたくらい拘れる人はなかなかいませんよ」
ディーラーは笑った。
「現実では誰よりも現状維持を望んでいるのに、皮肉なものだな」
「ちなみに、現実世界でもそのような決断ができるように製作された治療プログラムが、このゲームの元になっているんですよ」
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