墜落。

旅客機が隣町に墜落したらしい。僕はイヤフォンをしていたからその墜落音に気付くことはなかったけれど、それなりの音がしたらしい。

ニュースはその墜落事故一色になった。100人以上の乗客は一人として助かることはなかったらしい。僕は可能性について考えていた。偶然乗り合わせた飛行機が墜落してしまう可能性。それを上手く想像することは出来ないが、それは現実の出来事のようだ。

しかし何より、僕はその人々の悲鳴や衝撃音がこの小さなイヤフォンによって遮られたことに、悲しみを抱いた。百人分の人生を、摩耗された音楽で上書きしてしまったような罪悪感が、僕を包んだ。

あれ以来、飛行機が離陸する瞬間、僕は目を瞑るようにしている。ささやかなレクイエムとして、可能性について考えるため。

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