被憑依。

身体がやけに重いと思ったら、君に取り憑かれていた。

僕はこれまで二度、厄介な霊に取り憑かれた経験がある。一体目は、中学の同級生の生き霊だった。彼は、僕に負けることが禁忌である宗教に入信しているみたいに、僕を酷く目の敵にしていた。彼は何でもそれなりにこなせるタイプであったが、僕は彼より何事も上手く取り組めた。(それで目を付けられたのだけど)だから、彼に随分執拗な嫌がらせを受けたものだ。僕は嫌がらせを受け流すことが一番得意だったから、彼は気の毒だ。でも、取り憑かれている間は、さすがに堪えたよ。

二体目は、高校生の時に交際していた相手の幽霊だった。一体目の苦い経験から、僕は生き霊にうっかり取り憑かれないように生きるようになっていた。僕は恋愛に対してかなりフレキシブルなタイプであったけど、別れ方には涙に血が滲むくらい気を付けていた。それだから、彼女が生きている間に僕が何か害を被ることは決してなかった。けれど、彼女は後にホストに狂信し、果てなき夢を小さな胸に抱いたまま、第六トーアから飛び降りてしまった。結局、彼女は振りかざしたつるはしの相手を間違えるみたいに、僕に取り憑いたのだ。僕は彼女を三日三晩説得して、成仏してもらった。まさか、幽霊の方にうっかり取り憑かれるとはゆめゆめ思わなかったよ。

そして、今回。三度目の相手。しかし、今回ほどすぐに思い当たることはない。まったく、若気の至りとはいえ、人なんて殺すものじゃないね。

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