まどろみてふてふ。

「それは、まどろみてふてふの仕業だわ」

「まどろみてふてふ? 」

「眠りを吸いとってしまう蝶々。まどろみてふてふにとって眠りは、狂おしいほどに甘い蜜なの」

「そんな蝶々がいるんだ」

「この世界には、確かに存在するのよ」

「厄介な存在だね。昨夜はやけに目が覚めて、ひどかったよ」

彼女は長い指で僕の胸をなぞる。

「でも、悪くはないこともあったでしょう? 」

「悪くはないこと? 」

「まどろみてふてふに眠りを吸われると、とっても淫らな夢を見るの」

バターが僕の太腿をゆっくりと伝う。

「その感覚は、とっても繊細で鋭敏。ある意味では、現実の感覚を超えたその快楽に惑溺してしまう」

彼女の体温が僕を誘う。

「まどろみてふてふ」


目が覚める。まったく、まどろみてふてふの仕業らしい。眠りに戻ろうと思ったが、彼女の美しい指になぞられた痕が疼く。僕は溜息をついて、まどろみてふてふを思った。

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