死神。

僕は君の死に方を知っている。君は旅先で刺殺される。君は、旅先で殺人現場に出くわし悲鳴をあげてしまうのだ。そのせいで、勢い余った殺人犯についでに殺されてしまう。それは世界中のどんな死に方よりも、不運と言えるのかも知れない。まるで雑誌の付録を気まぐれに開くみたいに、何にも替えがたい命を絶たれる。余りにも現実的ではない不幸を君が被ることを知った時、僕は恐怖から頬笑んでしまった。

僕は時々、死神の声が聞こえる。死神は僕の夢の中で指をパチンと鳴らし、その映像を僕に差し出す。映像が終わると、不幸の蜜に酔いしれるような表情を浮かべながら僕に諭す。「もし死に方をこいつに伝えれば、誰かが代わりを務めることとなる。その誰かは決まって、伝えた奴になるらしい」

訃報が届いた時、僕は自分の不甲斐なさに頬笑んだ。もう何人目かは分からない。かけがえのない友人達が、指を一本ずつ折るように消えていく。何よりも苦しいのは、それを知っていて隠している自分自身の不甲斐なさだ。しかし、どうすることができよう? もし僕が自分自身を犠牲にしたら、死神の代りを務めるのは僕なのだ。


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