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一万編計画

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一万編の掌編小説(ショートショート)を残していきます。毎日一編ずつ。
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2021年2月の記事一覧

肉体の表象。

自分の肉体に虚ろな何かを感じるようになった。まるで自分自身の存在が虚構であるかのような、…

暗証番号。

僕はPCの画面の前で項垂れる。この仮想空間には、数億円もの資産が眠っているのだ。しかし、た…

孤独なマスター。

煙草が不味くなるくらい人が来ない。経営のノウハウはおさえていたつもりだし、事実十分に暮ら…

野良鵺。

「この奇妙な生き物はいったい何…?」 「これは、鵺だよ。」 「…?」 「ぬ、え。」 「こ…

チェス。

「ブダペスト・ギャンビットだなんて、随分お洒落じゃあないか。」 「…これでもまめに勉強し…

帰巣本能。

夜道。勤勉な信号ですらその役割を放棄する、街全体が静まりかえる時間。俺はこの時間にいつも…

酩酊。

 激しいクラクションが僕を現実へと引き戻す。僕はぼんやりとした頭で必死に状況を整理する。クラクション。酩酊。徒歩。そうか、僕は車道を歩いていたのか。  やがて、自分の記憶がすっぱりと断絶していることに気付く。どこまでを覚えている?自分に問いかけ、茂みに刹那的な嘔吐をしたことに多い当たる。そこから、記憶をなくしたまま歩いていたとは俄に信じがたい。距離にしては数キロあるし、それなりに分岐点もある。なにより、大きな橋を渡らなくてはならない。冬空の冷たく強い風を受けて、記憶を飛ばし

腹痛。

 ひどい腹痛で何もする気が起きない。数年に一回、このようなことがある。病院にいっても原因…

眠り。

眠る瞬間にどうしても立ち会いたかった。それは、純粋な好奇心だった。僕はありとあらゆる好奇…

千切り。

 千切りが得意になった。あれほどとらわれていた庖丁への恐怖心も、すっかりなくなった。コン…

As times goes by。

「…As times goes by。」 「お兄さん、粋な曲好きなんだね。」 「小説に出てくるんです。」…

台風の目。

 「あれが台風の目ってやつか!」  隣のアメリカ人は片言の日本語で沸き立っている。今時日…

雲集霧散。

霧が唐突に立ち込める。世界は瞬時に、まるでパレットを白の絵の具で敷き詰めるように真っ白に…

稲妻。

 ゴロゴロと稲妻が耳を劈く。  「うわぁー綺麗。」  息子は稲妻に見とれていた。  「あんた、よく怖くないねぇ。」  「綺麗なんだもん。…うたれてしまう訳もないのにさ。」  「あんた、雷に打たれて死ぬ人だって少なからずいるんだよ。」  「…宝くじに当たるような確率でしょ?」  「子供なのに、随分冷めているのねぇ。」  「なんで当たるのがいいことみたいになってるのさ。」  「そうじゃなくて、子供ってのは普通確率の小さいことが好きでしょう。プロ野球選手になりたい